肝臓のリハビリ 肝炎・肝硬変の運動療法、治療体操

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沈黙の臓器と言われ、病状が重度に進行するまで症状を出さない肝臓ですが、体にとって欠かせない機能をたくさん持っています。

糖質、脂質、タンパク質の代謝、ビタミンの貯蔵、ホルモンの代謝、毒素の解毒などなど、その機能は500種類以上あります。

食の欧米化にともない脂肪肝になる人が増え、そこから肝炎や肝硬変などに重症化する人も増えています。

そんな肝機能障害の治療にリハビリでの運動療法が、注目を集めています。

 

そこで今回は肝臓リハビリテーションをテーマに、その有効性と実際のやり方についてお伝えしていきます。

 
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肝臓の場所と肝臓が悪くなる原因について

まずは肝臓がどこにあって、どのような形をしているのか確認しておきましょう。

急性腹症症状CT鑑別

肝臓のみを見てみましょう。

胆嚢場所図

肝臓の下にのぞいている緑色のものは胆嚢です。

 

肝臓が悪くなる原因は大きく分けて6つあります。

ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease;NAFLD)、薬剤性肝疾患の6つです。

 

ウイルス性肝炎

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが原因となります。

肝がんの原因の約90%がB型、C型肝炎となっています。

注射器の回し打ちが禁止されたり、母子感染への対策が取られるようになった現代では、新規患者数は大きく減少しています。

しかしすでに感染している人の発がんはいまだ増加傾向です。

 

自己免疫性肝炎

日本国内での推定患者数は約6,800人とされ、9割を女性が占めています。

 

アルコール性肝障害

お酒の飲み過ぎが「肝臓に悪い」というのは、もはや一般常識かもしれません。

アルコール性肝障害は、さらにアルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変に分けられます。

肝臓がんに進行することもあり、命に関わる病気です。

 

NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)

NAFLDは単純脂肪肝と非アルコール性脂肪炎(nonalcoholic steatohepatitis;NASH)に分けられます。

前者は比較的、重症化しにくいですが、後者のNASHは肝不全にまで至ることもあり、命に関わる状態にまでなります。

NASHはお酒をそれほど飲んでいない人にも起こります。

NASHを起こしやすい人は、体脂肪が多いことに加え、ストレスなどにより活性酸素が多すぎる人、体に炎症が起こりやすい人、インスリン抵抗性がある(糖尿病もしくは糖尿病傾向)などの要因があるとなりやすいです。

発症すると肝細胞が変性、壊死、繊維化をきたします。つまり肝細胞が死んでしまうということです。

 

これは食の欧米化より、脂肪をたっぷり含んだ食事を大量に摂るようになったこと、運動不足で精神的、肉体的にもストレスを溜めやすい社会になったことで、生活習慣病になる人が増加したことが原因です。

肥満の人の実に58~74%がNAFLDが認められており、重症化した場合NASHに進行します。

 

薬剤性肝疾患

これは薬剤に対するアレルギーとして症状が出る場合と、薬剤の作用そのものから症状が出る場合があります。

病気の経過は肝細胞型と胆汁うっ滞型で違います。一般に前者では薬の服用をやめればスムーズによくなっていきますが、後者では治りが悪いことがあります。

 

肝臓リハビリテーションの実際

肝臓リハビリテーションはまだ発展途上の分野であり、確立されたものはありません。

しかし、内臓脂肪の過剰蓄積とインスリン抵抗性が、肝臓の病気に関連していることは分かっています。

ちなみにインスリン抵抗性とは、肝臓や筋肉でインスリンが作用しなくなった状態を指します。

インスリンが働かないと糖が細胞に取り込まれず、血液中の糖分が多くなり、糖尿病の原因となります。

 

リハビリで運動を行い脂肪を減少させたり、インスリン抵抗性を改善させることは可能ですので、肝機能障害に対しても良い影響を与えることができます。

また慢性肝炎や館線維症、進行していない肝硬変では、有酸素運動で肝機能の悪化やその他の問題は生じないとされています。

 

しかし、腹水や肝性脳症のある患者では運動は禁忌です。

黄疸は急激に悪化しているようでなければ運動しても大丈夫です。

 

ただし炎症の活動期や黄疸が悪化してきている状態では、運動は控えた方が良いです。

このあたりのことは主治医に確認をとった方が良いです。

 

肝臓リハビリではどのくらい運動すべき?

短距離走や重量挙げのような瞬発力を要する運動では、筋肉内でアンモニアが発生します。

健常者が最大運動強度の70~75%で運動を行っても、血中のアンモニア濃度は上昇します。

 

肝臓はアンモニアを処理する機能も持っていますが、肝機能が低下しているとこれが処理できず、体の中に溜まってしまいます。

アンモニアは体にとって毒なので、これは非常に危険な状態になります。

一方で

最大運動強度の50%から60%までの有酸素運動は代償期(肝機能が保たれている時期)のChildAの肝硬変患者では有酸素運動であれば臨床的な問題は生じない

との報告があり、有酸素運動は肝機能に障害があっても、安全に運動を行うことができます。

 

日本肝臓学会(2006)ではNASH・NAFLDの具体的な運動の程度や目安として

  1. (220-年齢)×60~70%=目標心拍数
  2. 毎日20分以上の有酸素運動が最も進められる
  3. 効果は継続した20分程度の有酸素運動が必要と言われているが、もっとも重要な点は、無理のない運動療法を継続して行えるような方針を立てる事である。
  4. 週3回程度で、1日の運動も数回に分けて行っても効果がある程度期待できる。

とされていますので、参考にして下さい。

 

肝臓リハビリではどんな運動をすべき?

運動としてお勧めなのは「ウォーキング」です。

ウォーキングはジョギングと比べても運動量が多くなりにくいですし、どこでも行えるという利点があります。

器具が必要だったり、特定の場所でしか行えない運動だと面倒になったり、飽きたりして続かないものです。

 

しかしウォーキングならシューズさえあれば、場所を選ばず行え飽きてきたら、他の場所に変えることもできます。

特にC型肝炎などは高齢者に多いのですが、高齢者は膝や腰を痛めている人も多く、あまり負荷量が強い運動は体への負担が心配です。

その点、ウォーキングは負荷量も大きくないですし、歩くペースを変えることで負担もコントロールすることができます。

また近所をウォーキングしていれば自然と近所の人と交流もしやすくなり、認知症の予防にもなります。

 

それでも膝や腰の痛みが気になる場合は、プールでの歩行をお勧めします。

プールでは身体が浮力によって浮くので、膝や腰絵の負担は緩和します。

一方で水中でウォーキングすると水が抵抗になり、良い運動になります。

 

運動時間としては日本肝臓学会の目安に従って、なるべく毎日20分以上行うようにします。

それが難しければ週3回程度行うだけでも、ある程度の効果は期待できます。

 

肝臓リハビリ 運動の注意点

しばらく運動をしていなくて、久しぶりに始めるという人は、徐々に運動量を増やしていくようしてください。

特に最初のうちは「物足りないくらい」でちょうどよいです。

 

最初からあまり張りきって行っても、体もびっくりしますし続かなくなってしまいます。

大切なのは、一度にたくさん動くことではなく、適度な運動を日々続けることです。

 

また運動の前後には、ストレッチなど軽い運動で体をほぐす準備体操と整理体操をおこなうようにしましょう。

準備体操をしていればケガをしにくくなりますし、整理体操をしておけば疲労がとれやすくなります。

 

上記した通り、運動量の目安は日本肝臓学会からも出ていますが、あくまでも目安です。

1人1人体力に差はありますので、自分に合った運動量を行うことが必要です。

その時に参考になるのが、

運動後には心地よい程度の疲労感があるか(疲れすぎてないか?)

翌朝起きた時に疲れが残っていないか

の2点です。

 

運動後に強い疲労感があったり、翌朝まで疲労が残っているようだと、運動量が多すぎます。

自分の体力に合わせた量を行ってください。

 

運動を行う時間ですが早朝に行う場合は、おにぎりやパンなどの炭水化物を摂取してからにしてください。

肝臓は糖をグリコーゲンとしてためておく機能がありますが、肝機能が低下していると、この能力が衰えており、早朝は体が栄養不足に陥っているかもしれません。

 

これらのことに注意して安全委、気持ちよくリハビリや運動を行ってください。

 

まとめ

肝臓のリハビリと題して、肝機能障害がある人のリハビリや運動療法についてお伝えしてきました。

脂肪の蓄積やインスリン抵抗性が肝機能障害の引き金となります。

これらは生活習慣によっておこるものです。

 

リハビリで運動を行うことは当然大切ですが、食生活を見直すことも同じくらい大切です。

脂質や糖分は控えめにして、しっかり運動を行うことで肝臓への負担を減らしていきましょう。

引用・参考文献

加藤眞三:慢性肝炎・肝硬変患者のリハビリテーション JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION vol.20 No.4

上月正博:肝機能障害患者における障害とリハビリテーションの考え方 JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION vol.20 No.4

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