廃用症候群のリハビリ治療と運動 理学療法士が徹底解説!

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廃用症候群とは手術や病気のために安静状態が長期に続くことで起こる、心身の機能低下のことをいいます。

リハビリの実際の場面では、廃用症候群の患者さんと接するときには、原因となった病気、あるいは怪我や手術は何だろうとまずは考えます。

つまり、廃用症候群と言ってもその原因は様々なのです。

廃用症候群は、その定義にもあるように長期間の安静によって起こるものです。

では安静にしなければそれでよいかと言うと、話はそう簡単ではなく必要な安静もあるということを考えながら、活動を促していかなければなりません。

 

必要な安静とは、手術後や病気の状態によって安静にしていないと、命の危機があるような状態です。

 

ですが、出来る限りベッドから離れて活動を促し、廃用症候群を予防することが大切です。

 

 

また高齢者では、長期と言っても2~3日のベッド臥床でも容易に廃用症候群を起こすので、リスク管理は徹底しつつも早期にリハビリなどで運動を行っていく必要があります。

 

 

そこで今回は廃用症候群のリハビリ治療として、理学療法士の視点から、廃用症候群を防ぐためのリスク管理や、運動、食事のことについて解説していきます。

 
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廃用症候群とリハビリ

廃用症候群とひとくちに言ってもその症状は多彩です。

様々な症状があるということは、リハビリの時にはそれだけ気にかけないといけないことも多いということです。

以下に廃用症候群によって出現する症状をおおまかにまとめました。

筋骨格系 筋力低下、筋萎縮、関節拘縮、骨粗しょう症
心・循環器系 心肺機能低下、運動耐容能低下、起立性低血圧、血栓塞栓症
呼吸器系 換気障害、上気道感染、排痰能低下
嚥下 咀嚼、嚥下運動脳低下、誤嚥」
神経系 神経反応低下、協調運動障害
精神系 繊毛、錯乱、見当識障害、不安、うつ、認知機能低下
皮膚 褥瘡
泌尿器・
消化器系
尿路結石、尿路感染症、排尿困難、食思不振、便秘
代謝内分泌系 電解質異常、耐糖能異常、
副甲状腺ホルモン上昇などのホルモン変化

 

このような廃用症候群のリハビリを行うにあたって考慮する項目は、環境、ストレス、呼吸循環状態、筋力低下、栄養状態の5つです。

 

ひとつずつご説明していきます。

 

廃用症候群のリハビリの注意点 1.環境

廃用症候群のリハビリでは、関節の運動、座る練習、立つ練習など、身体を動かすことを中心に行うことが多いです。

 

その中で環境というのは、運動の準備が整っているかということです。

睡眠は十分にとれているか、食事はとれているか、便通はどうか、全体的に体調はどうかをまずはチェックします。

 

体のコンディションが整わないと運動をする気にならないですし、効果も得られにくくなります。

それは健康な人と同じです。

 

 

廃用症候群の人は、自分で身体の向きを変えることが難しい人もいて、褥瘡(床ずれ)予防のために、エアマット(柔らかい敷布団)を使っていることもあります。

 

これを使えば確かに褥瘡はできにくくなりますが、布団が柔らかすぎるとかえって動き辛くなってしまい、活動を阻むことになりかねません。

 

ベッドの硬さは必要性によって変えていかなければいけないということです。

 

 

また、同じベッド上生活でもベッドを平らにしたままで天井を眺めているのと、リクライニング機能を利用して、座位姿勢になって周囲を見ているのとでは、身体機能もそうですが認知症の予防にも違いが出ます。

 

頭を起こしていれば、様々なものが視界に入るので、脳へ刺激が入力されますし、視線と共に頭が動けば、頭を支えるために首や肩の筋肉も働きます。

 

首や肩の筋肉は呼吸や、嚥下(飲み込み)にも関わる重要な筋肉ですので、こうした一工夫も大切です。

 

廃用症候群のリハビリの注意点 2.ストレス

普段、健常者であれば仕事でくたくたになっていると1日ベッドに寝ておいていいと言われれば、嬉しいような気もするかもしれません。

 

しかし、実際1日中ベッド寝ていることを強制されると、大きなストレスになります。

 

リハビリで運動をする時間と言うのは、その寝たきり状態から解放される時間でもあります。

 

そのことを認識して、労いの言葉かけなどをしながらリハビリを行うことで、気持ち的にも楽になるでしょう。

 

廃用症候群のリハビリの注意点 3.呼吸、循環状態

廃用症候群の人は手足の筋力が低下しますが、同じように呼吸に関わる筋力も低下します。

 

呼吸に関わる筋力の低下は命の危機にも直結することです。

 

加えて呼吸能力が低下することで、排痰(痰を出すこと)が難しくなります。

理学療法士であれば、聴診器を使い痰がたまっているところを見つけ出し、排痰を行う手技を用います。

ただし、そういった手技を用いずとも、ネブライザー(痰を湿らせ、出しやすくする機械)の使用や体の向きを変えることでも痰は出やすくなります。

寝たきりで廃用症候群になっている場合、心機能も当然低下していますので、循環状態にも注意が必要です。

 

運動療法のリスク管理として有名なものにアンダーソンの基準・土肥変法という基準がありますので、そちらを載せておきます。

運動を
行わない方が
よい場合
1.安静時脈拍数120/分以上
2.拡張期血圧120以上
3.収縮期血圧200以上
4.労作性狭心症を現在有するもの
5.新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
6.うっ血性心不全の所見の明らかなもの
7.心房細動以外の著しい不整脈
8.運動前すでに動悸、息切れのあるもの
途中で運動を
中止する場合
1.運動中、中等度の呼吸困難、めまい、
嘔気、狭心痛などが出現した場合
2.運動中、脈拍が140/分を超えた場合
3.運動中、1分間10個以上の期外収縮が
出現するか、または頻脈性不整脈
(心房細動、上質または心室性頻脈など)
あるいは除脈が出現した場合
4.運動中、収縮期血圧40mmHg以上
または
拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
次の場合は
運動を一時中止し
回復を待って
再開する
1.脈拍数が運動前の30%を超えた場合、
ただし、2分間の安静で10%以下に戻らぬ
場合は、以後の運動を中止するかまたは
きわめて軽労作のものに切り替える
2.脈拍数が120/分を超えた場合
3.1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合
4.軽い動機、息切れを訴えた場合

 

廃用症候群のリハビリの注意点 4.筋力低下

長期間のベッド臥床により筋力が低下しますが、具体的にどのくらい落ちるのかと言うと、

14日間のベッド臥床で、膝伸展筋力(膝を伸ばす力)は、約15%低下、

20~35日間で約20%低下した

と報告されています。

 

廃用症候群になりやすい高齢者は、若年者と比べて、筋力の余裕が少ないです。

すなわち、高齢者の場合わずかに筋力が落ちただけでも、歩行や立位保持の能力が著しく低下することもあるのです。

 

ですから、そのようにならないためにも、早期から廃用症候群予防のリハビリが必要なのです。

 

廃用症候群のリハビリの注意点 5.栄養

体を動かして、体力や筋力をつけるために栄養が必要なのは、当然のことですね。

スポーツ選手が栄養を管理するように、リハビリを受ける人も栄養の管理が必要です。

 

これをリハビリ栄養と言います。

 

いくら動いたところで、栄養状態が悪ければそれはむしろ逆効果となってしまうこともあるので注意が必要です。

 

リハビリ栄養についてはくわしくはこちらをご覧下さい。

参照)廃用症候群にも必要なリハビリ栄養の考え

 

廃用症候群のリハビリの実際 どんな運動をしたらよいか

廃用症候群のリハビリの場合、まずはベッドサイドでのリハビリが中心になります。

まずはバイタルサインをチェックして、上記したアンダーソン基準・土肥変法に該当しないかを確認します(運動中も適宜、バイタルサインはチェックします)。

 

では運動をご紹介していきます。

 

頭を持ちあげる運動

嚥下機能の強化、腹筋の強化

廃用症候群 リハビリ治療 運動療法 理学療法士 体操 予防

 

お尻を持ち上げる運動

背筋、臀筋、足の筋力の強化

廃用症候群 リハビリ 治療 運動 改善 理学療法士 体操

 

ベッド上でのボール蹴り

体を支える足の筋力の強化

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実際にすぐに立つ練習は負荷が強すぎることもありますので、まずはベッド上で、ボールを蹴って足に力をいれる練習から始めます。

 

可能であれば、ベッドの端に腰かけたり、立位保持を行います。

ただし体を起こすと、起立性低血圧といってふらーっと体を起こした際に血圧のコントロールが上手くいかず、貧血のような症状を出してしまうケースもあるので注意が必要です。

 

起きてベッドから離れている時間が、長くなればなるほど、廃用症候群からの離脱も早くなります。

 

まとめ

廃用症候群のリハビリ治療について、運動やリスク管理の方法をお伝えしてきました。

一昔前は病人は安静が第一と言う風潮がありました。

しかし最近は過剰な安静は、むしろ害になることが多くの研究により証明されています。

ただし、家庭でリハビリを行う場合は専門の医師や、理学療法士からアドバイスを必ず貰ってください。

参考・引用文献 出口清喜 廃用症候群と理学療法 PTジャーナル第46巻第9号

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