排便を可能にしているのは、直腸の収縮する力と横隔膜や腹筋を使った「いきむ」力です。
直腸の収縮は自律神経がつかさどっており、意識的に行うことはできません。
しかし「いきむ」時に使う腹筋や横隔膜は、意識的に働かうことのできる筋肉です。
この意識的に働かせれる筋肉をうまく使えば、便秘の方も快便にスッキリ出しやすくなります。
そして、スッキリ排便がしやすいトイレでの姿勢があります。
それは「前かがみの姿勢」です。
なぜ前かがみになると、辛い便秘もスッキリと出しやすくなるのか。
今回は便の出し方について、正しい姿勢とはどんな姿勢なのか、なぜその姿勢だと排便しやすいのかを解剖学の観点からお伝えしていきます。
便秘に悩んでいる方はトイレでの姿勢から見直してみるのもよいかもしれません。
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排便は直腸との収縮と腹圧の共同作業
便は、大腸である結腸の中を移動してきて、最終的に直腸にたどり着きます。
溜まった便によって、直腸が150~250ml程度拡張されると便意をもよおすようになっています。
便意をもよおすと同時に肛門をふさいでいる「内肛門括約筋」は自動的に緩みます。
肛門をしめる筋肉は2重構造になっており、「外肛門括約筋」というものもあります。
こちらは意識的に動かせれるので、便意を感じてもお尻を締めてトイレまで我慢をすることができます。
ですから内肛門括約筋が緩んだからといて、すぐにウンチが出てくるということはありません。
外肛門括約筋のおかげでおもらしをせずに済んでいるというわけです。
一方、便秘などで便がカチカチになっている人は、強くいきまないと排便できないという方もいらっしゃるでしょう。
実際、毎日快便という方でも少しはいきんでいることがほとんどです。
いきむときには、腹筋や横隔膜という筋肉を収縮させて行っています。
横隔膜と腹筋の位置を確認しておきましょう。
こちらが横隔膜です。
こちらが腹直筋です。(腹筋というのは総称で、腹直筋、内・外腹斜筋、腹横筋のことを指します)
ところで、腹直筋といえばボディビルダーの人などは6つに割れています。
こんな感じです。
では、なぜ腹直筋はこのように割れているのでしょうか。
その理由の1つは、腸への圧を分節的にかけるためです。
つまり、お腹の上の方に腹圧をかけたり、あるいは排便時に腸のある下の方に腹圧をかけたりと、部位ごとに分けて圧力をかけるためにこのように、複数のパーツに分かれているのです。
排便はこのように直腸の収縮と、腹筋や横隔膜の共同作業によって可能になっているのです。
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排便に適した姿勢とは
では排便するときに適した姿勢とはどのようなものでしょうか。
排便するときには、和式でも洋式でも座ってしますが、これは座ることによって、腹筋や横隔膜に力が入れやすくなるため理にかなった方法です。
この時、腹圧をよりしっかりかけるためには前かがみの姿勢が適しています。
前かがみの姿勢を取ることでいきむときに使う腹直筋は収縮しやすくなります。
また、腹部のスペースが狭くなるので、腹腔内の臓器が圧迫をうけ腹圧が高まります。
それによって、下図のように直腸から便を押し出す力が強くなります。
さらに前かがみの姿勢になると、肛門に対して直腸がまっすぐになりやすいので重力に従って排便しやすいです。
ただしここで注意しておかないといけない事があります。
それは腹腔を下支えする骨盤底筋がしっかり働いていなければ、うまく腹圧がかからないということです。
骨盤底筋群の位置を確認しておきましょう。
骨盤底筋は文字通り、骨盤の底を形成する筋肉のことです。
この骨盤底筋が腹腔を下支えすることで、上からの圧力を受け止め直腸が便を押し出すように圧を加えることができるのです。
骨盤底筋の働きを促すためには、普段から骨盤底筋体操など行い、鍛えておくことが必要です。
骨盤底筋体操についてはこちらをご参照ください。
姿勢のことだけで言えば、和式トイレが最も排便しやすい格好と言えます。
しかし、現代では和式トイレの過程は少ないですし、膝を痛めていたりするとしゃがんで用を足すのは難しいです。
では、洋式トイレで排便しやすい姿勢はどのような姿勢かというと、
両肘を両膝につけた姿勢です。
このような状態です。
この姿勢で、短時間いきむのが排便に効果的です。
ただし、いきむのは短時間にしておいてください。
あまり長くいきむと痔の原因になったり、血圧が上がり過ぎることによって血管系の病気になりかねませんので注意してください。
いきみについてはこちらの記事もご参照ください。
まとめ
トイレでの排便に適した姿勢についてお伝えしてきました。
前かがみの姿勢が排便しやすいというのは、経験的に感じておられる方も多いのではないでしょうか。
しかし、具体的になぜ前かがみの姿勢がよいのかということはご存知なかったかもしれません。
今回ご説明したように解剖学的に見ても、前かがみの姿勢は排便しやすい姿勢と言えます。
いきみ過ぎには注意して、スッキリ排便できるよう姿勢にも気を付けてみて下さい。
参考・引用文献) コンチネンスケアに強くなる 排泄ケアブック 著:西村かおる