腸重積と書いて、「ちょうじゅうせき」と読みます。
腸が重なって積もると読み替えることもできますが、これは腸重積の病態をうまく表しています。
腸重積では、肛門側の腸管に口側の腸管がはまり込み、重なったような状態になります。
腸重積が最も発生しやすいのは乳幼児ですが、成人で発生することもあります。
腸重積から、血流障害を伴う複雑性イレウスに発展することもあり、手術が必要なこともある重い病気です。
腸重積という言葉は聞いたことがあっても、どんな病気で、なぜなるのかといったことは、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
また腸重積について耳にしたことがある方は、子どもに発生するものと認識されている方もいるかもしれませんが、実は成人でも発生することがあります。
成人と乳幼児では、腸重積になる原因も異なります。
そこで今回は、腸重積の症状や原因などについて、図を交えながらわかりやすく解説していきます。
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腸重積とは
腸重積とは、上記した通り、肛門側の腸管に口側の腸管がはまり込むことで発生します。
腸重積が発生すると、腸の内容物がうまく流れなくなったり、血液の循環が悪くなったりします。
血液の循環が悪くなった腸重積は、複雑性イレウスとも呼ばれます。
複雑性イレウスになると、血液が腸の細胞に行き渡らないため、腸管が壊死[えし](細胞が死んでしまうこと)したり、腸管に穴が開いたりします。
複雑性イレウスが発生した時には、急激で持続的な強い腹痛が起こり、激しい吐き気や嘔吐を伴います。
緊急に手術が必要なこともある重たい病気のため、このような症状があるときは救急受診しましょう。
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腸重積は赤ちゃんがなりやすい
腸重積になりやすいのは、生後4か月から2歳程度の乳幼児です。
成人では腫瘍やポリープが腸重積の原因になりやすいのですが、乳幼児の場合は、腸管自体が重なるようになって、腸重積が発生します。
腸重積が起こりやすいのは、回盲部です。
回盲部の位置を図で確認しておきましょう。赤丸の所が回盲部(回腸と盲腸の移行部です)
回盲部の断面図です。
回盲部の腸重積は、回腸側の腸管が盲腸の方にはまり込むことで、発生します。
特に赤ちゃんは、自分で症状を訴えることができないため、注意が必要です
特徴的な症状として、イチゴジャムやトマトをつぶしたような赤色のうんちが出てきたら要注意です。
この赤色は血の色で、腸管で出血が起こっている可能性があることを示します。
その他の症状として、激しく泣いたり、急に泣き止んだりということを繰り返します。
腸の動きに合わせて、お腹が痛んだり、おさまったりを繰り返すので、泣いたり大人しくなったりを繰り返します。
腸重積の治療では、初期対応がとても重要なため、上記のような症状がある場合は、病院を救急受診するべきです。
腸重積に成人がなった場合
成人が腸重積になる原因は、腫瘍やポリープ、Meckel憩室(メッケルけいしつ)などであることが多いです。
腫瘍として代表的なものは、大腸癌です。
仮に大腸癌が腸重積の原因であった場合、腸重積の治療を行うとともに、癌の治療も行わなければなりません。
Meckel憩室とは、回腸にできる袋状のできもののようなものです。
回腸の位置を図で確認しておきましょう。黄色くなっている場所が回腸です。
このできものが、腸管の方にはまり込んでしまうと、腸重積や複雑性イレウスに発展してしまうことがあります。
腸重積の原因が癌などの腫瘍であった場合、治療法としては、原則として手術が選択されます。
つまり、腫瘍部分を手術で取り除いて治療するということです。
腸重積の症状とは?
腸重積が複雑性イレウスにまで発展すると、成人であっても救急受診が必要です。
複雑性イレウスが起こった時の症状は激しく、非常に強い腹痛や腹膜刺激症状、粘血便(粘っこい血便)などが代表的です。
腹膜刺激症状は、腹膜にまで炎症が及ぶことで発症するもので、筋性防御、反跳痛といった症状が出現します。
筋性防御とは、お腹に触れると腹筋が強く収縮し、カチカチになる状態のことを言います。
反跳痛とは、お腹を押さえた状態から急に手を離すと、お腹を押さえていた時よりも強い痛みが出現する状態のことを言います。
上記のように腹膜刺激症状や、強い腹痛、血便が出る場合は、救急に病院を受診するべきです。
病院にかかった時、一般的に行われる検査は以下の通りです。
血液検査、腹部X線検査、腹部CT造影検査、超音波検査、注腸造影検査など。
これ以外にも、医師の判断によって必要な検査が追加で行われることもあります。
まとめ
腸重積について、成人で起こる場合は腫瘍やポリープ、Meckel憩室などが原因となることが多く、乳幼児では、腸管自体が先の腸管にはまり込むことが原因になりやすいということがお分かりいただけたと思います。
腸重積は、場合によっては緊急手術が必要になることもある病気です。
乳幼児でも、成人でも、腸重積は初期対応が重要です。
特に、乳幼児は自分で症状を説明することができません。
いつもと様子が違ったり、赤いうんちが出るようなことがあれば、夜間でも救急受診する方が賢明です。
腸重積は、重篤な病気に発展しかねないということを知って、素早い対応が取れるようにしておきましょう。