小腸の位置を解剖図で解説!小腸の機能と働きについて

小腸は、お腹の中心に位置しています。

手術の時などに開腹すると、すぐに小腸や大腸がみえると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は違います。

胃の下から大網という大きな腹膜が広がっています。

この腹膜は前掛けのように、胃の下にぶらさがっているので、それを引き上げるとようやく小腸や大腸を確認することができます。

小腸は全長6~7m程もある非常に長い臓器です。

消化管の全長が9m程であることを考えると、その2/3以上が小腸で占められているということになります。

小腸は吸収に特化した唯一の器官です。

生物にとって栄養を吸収するということは、生きることに直結する、非常に重要性の高いものなので、これだけの長さがあるのです。

 

今回は、栄養を吸収し、命の源ともいえる小腸の位置を、解剖図で分かりやすく解説していきます。

 

小腸の位置を解剖図でチェック!

小腸と他の臓器との位置関係が分かりやすいように、胃、小腸、大腸の解剖図をまずは確認してみましょう。

小腸位置図 機能働き全体像

続いて小腸だけの位置を確認してみましょう。

小腸位置図 機能働き小腸

このように小腸はお腹の中心に蛇行するように位置しています。

小腸は十二指腸から始まります。

 

十二指腸の位置は下図の黄色くなっているところです。

小腸位置図 十二指腸

十二指腸は腹膜の後ろ側に固定されており、ここにはファーター乳頭(大十二指腸乳頭)があります。

ファーター乳頭は膵臓や胆のうとつながっており、膵液や胆汁がここから分泌されます。

小腸の中でも部位ごとに役割が分かれており、十二指腸は消化液を分泌し、続く空腸、回腸でしっかり栄養が吸収できるようにしています。

十二指腸が終わると、空腸、回腸につながります。

空腸、回腸の位置はこちらです。

小腸 位置 図 空腸回腸

空腸、回腸は固定されておらずグニャグニャと位置しています。

解剖図だとこのように位置が規定されているように見えますが、実際は人によってかなり位置が違います

もちろん位置が違うといっても、腹腔の中に収まる範囲でです。

小腸は回腸で終わりで、その先は大腸である盲腸へとつながります。

回腸と盲腸の間には、逆流防止する弁があり、これを回盲弁(かいもうべん)と呼びます。

 

ちなみに小腸を横から見ると、このように位置しています。(小腸が見えやすいように、右骨盤を外しています)

小腸位置図 横図

こちらの商品はおもちゃですが、割と精巧に作られており臓器の位置関係を理解するのに役立ちます。

 

小腸の表面積を広げる工夫 絨毛

小腸には絨毛(じゅうもう)と呼ばれるヒダが無数にあります。

その絨毛にも、さらに絨毛がついており、これを微絨毛(びじゅうもう)と呼びます。

こちらが絨毛の模式図です。

小腸位置図 絨毛

この絨毛や微絨毛のおかげで小腸の表面積は、劇的に広くなり、ヒダを全て伸ばして広げるとテニスコート1面分の広さにまでなるとも言われています。

人にとって、栄養を吸収するということは、生命活動を維持するために最重要項目の1つなので、食べた物から少しでも多くの栄養を吸収するために、このような構造になっているのです。

 

ところで、絨毛の中央にはリンパ管があります。

実はこのリンパ管は脂肪を吸収するために存在しているのです。

糖やアミノ酸は小腸の毛細血管から吸収されていきますが、脂肪は毛細血管から吸収ができません。

なぜかというと、脂肪はネトネトしているので、それを毛細血管から吸収すると、血管がつまってしまいダメになるからです。

そこで、リンパ管から吸収する仕組みがあるのです。

リンパ管で吸収された脂肪は乳糜管というところにつながり、そこから心臓の近くにある腕頭静脈という大きな静脈に流し込まれます。

こうすることで、脂肪は大量の静脈血の中に入り、血管がつまることを防いでいるのです。

静脈血に流し込まれた脂肪は肝臓まで運ばれ、体内で使えるように処理されます。

このように小腸には、栄養をうまく吸収するための数々のしくみがあるのです。

 

小腸の運動

小腸は内容物を先へ送ったり、かきまぜたりするためにさまざまな運動を行っています。

ここでは、その運動を紹介していきます。

まずは分節運動(ぶんせつうんどう)です。

これは腸壁を収縮や弛緩を繰り返させることで、消化された食べ物が、しっかり小腸粘膜と接触して、効率よく吸収するための運動です。

 

続いて振子運動(ふりこうんどう)です。

これは分節運動と同様に、小腸粘膜が、消化物としっかり接触するために行われる運動です。

小腸が細く長く伸びたり、元に戻ったりを繰り返します。

 

最後が蠕動運動(ぜんどううんどう)です。

これは小腸の内容物を先へ移送するための運動で、小腸の中枢側(口の方)が強く収縮することで内容物を先へ押し出します。

残り少なくなった歯磨き粉のチューブから、歯磨き粉を絞り出すときのようなイメージです。

小腸ではこのような3つの運動によって、消化、吸収や内容物の移送を行っています。

 

まとめ

小腸の位置を解剖図で解説!と題してお伝えしてきました。

小腸がお腹にあるということは知っていても、その詳しい位置や形までは、ご存知ない方も多かったのではないでしょうか。

小腸は消化、吸収をスムーズに行うために、絨毛があったり特殊な運動をしていたりします。

普段は、そんなことを意識しなくとも勝手にやってくれていますが、実はお腹の中では日夜働き続けてくれています。

そんな小腸の働きを助けるために、食べ物はよく噛んで食べることです。

よく噛まず、丸呑みしたようなものを消化、吸収するのは大変で、小腸も疲れてしまいます。

また食べ過ぎも小腸だけでなく、内臓全体を疲労させる原因になりかねません。

日ごろの生活から気を付けて、小腸を労わってあげましょう。