回腸と書いて「かいちょう」と読みます。
内臓の一部ですが、どこの臓器かご存知でしょうか?
回腸は小腸の一部です。
同じく小腸の一部である空腸【くうちょう】から、回腸へとつながり、回腸からは大腸の一部である盲腸【もうちょう】へとつながっています。
空腸と回腸の境目は明らかに分かるような指標はありませんが、おおよそ口側の2/5程度が空腸で、それ以降の3/5程度が回腸となっています。
この辺は、少々曖昧です。
回腸を始めとする小腸には、重要な働きがあります。
それは栄養の吸収です。
小腸は、栄養を吸収できる唯一の器官であり、これは他の臓器のどんな機能よりも、重要な機能と言っても過言ではありません。
なぜなら、体の臓器は、どれも栄養なしでは働くことができないからです。
当たり前の話ですが、人が生きていく上で栄養の吸収は欠かせません。
ですが、そんな重要な臓器である回腸がどこにあって、どんな形をしているのかということを知っている方は、あまり多くないと思います。
そこで今回は、回腸の位置を図を用いて分かりやすくお伝えし、どのような働きがあるのか詳しく解説していきます。
回腸の位置を図でチェック!
では、さっそく回腸の位置を図で確認してみましょう。
こちらが回腸です。
分かりやすいように、小腸全体を図で確認してみましょう。(黄色く色づけされているところが回腸です。)
小腸には、回腸の他に、十二指腸【じゅうにしちょう】、空腸があります。
さらに、その他の主な消化器系の臓器も、一緒に見てみましょう。
臓器全体でみると、ほんの一部といった感じです。
ところで、この解剖図を見ると、回腸はお腹の中で浮いているように見えますが、どのようにしてその位置を保持しているか、ご存知でしょうか。
回腸は、空腸とともに腸管膜【ちょうかんまく】という膜によって支えられています。
腹腔の後面から伸びている腸管膜によって、その位置がある程度、固定されています。
膜での固定なので、がっちりと固定というわけではなく、ある程度”遊び”があります。
小腸は全体で6〜7m程度の長さがあるので、回腸は3.5〜4m程度の長さとなります。
ただし、小腸は内容物を先へ送るために、伸びたり縮んだりします。
ですから、その長さはその時々で変わってきます。
回腸の位置や形状が大まかには、お分かりいただけたでしょうか。
続いては、回腸の機能について解説していきます。
回腸の機能や働きとは?
回腸は小腸の一部であるため、栄養を吸収する働きがあるということは、お伝えした通りです。
ですが、同じ小腸でもその部位ごとに吸収されやすい栄養素は違います。
五大栄養素である糖質、脂質、蛋白質、ビタミン、ミネラルを含む大部分の栄養素は、十二指腸と空腸で吸収されます。
もちろん回腸でも、これらの栄養素は吸収されますが、回腸の末端で特に吸収されやすい栄養素があります。
それは、ビタミンB12と胆汁酸【たんじゅうさん】です。
ちなみに、胆汁酸とは脂肪の消化、吸収を助ける物質です。
そのため、手術などで回腸を除去された方は、これらの物質をうまく吸収できなくなってしまいます。
ビタミンB12が吸収できなくなると、巨赤芽球性貧血【きょせきがきゅうせいひんけつ】を発症しやすくなり、胆汁酸が吸収できなくなると、脂肪の吸収障害が起こり、脂肪便が出やすくなります。
回腸の内側はどうなっている?
小腸を切って広げると、約200㎡もの広さになります。これはテニスコート1面分より少し小さいくらいの広さです。
これを可能にしているのが、小腸の絨毛【じゅうもう】です。
絨毛とは、小腸の内腔を覆う多数の突起のことです。
下図は絨毛の模式図です。
絨毛にはさらに微絨毛【びじゅうもう】と呼ばれる、より小さな突起がついています。
これは表面積を広げるための、小腸の工夫です。
表面積を広げることで、より多くの栄養素を吸収しようとしているのです。
仮に、絨毛がない小腸を広げただけでは、0.33㎡にしかなリません。
いかに絨毛が表面積を広げるのに、役に立っているかお分かりになると思います。
ちなみに、小腸から吸収された栄養素は、門脈【もんみゃく】と呼ばれる血管を通り、肝臓に運ばれ処理されます。
肝臓では、有害物を解毒処理したり、栄養素を溜め込んだり、体の中で使える状態に処理されます。
まとめ
回腸の位置や働きについて、解剖図を用いて解説してきました。
小腸という名前は知っていても、その中に回腸と呼ばれる部位があることはご存じない方も多かったのではないでしょうか。
小腸は栄養を吸収できる唯一の器官であり、さらに部位ごとに吸収しやすい栄養素は異なります。
回腸では特にビタミンB12や胆汁酸が吸収されやすいということが、お分かりいただけたと思います。
今回、体にとって大事な器官である回腸について、知ることができたと思います。
冷たいものを一気に飲んだり、よく噛まずに食べたり、腸に負担のかかる習慣は避けて、腸に優しい生活を送りましょう。