心臓は体全体に血液が行きとどくように日夜働いてくれています。
そんな心臓がどこにあるのか、ご存知でしょうか。
心臓と言えば胸の中心にあって、ドクドク動いて血液を送り出す器官とイメージされる方が多いです。
心臓の位置としてはほぼ胸の中心にあるのですが、実は先の方はやや左側に傾いています。
また心臓は4つの部屋に分かれており、それぞれの部屋で役割が違います。
なぜ心臓が左に傾いていたり、4つの部屋に区切られているのか疑問に思われる方も多いと思います。
そこで今回は、心臓の位置を解剖図を用いてお伝えし、その機能や働きについて解説していきます。
心臓の位置を図でチェック!
まずは心臓の位置を図で確認してみましょう。
胸骨と肋骨の後ろ側に「こぶし」ほどの大きさで、心臓が位置します。
心臓は人体の中でも重要な臓器で、全身の血液を循環させています。
内臓は血液によって栄養をもらい、老廃物を排泄するので、心臓なしでは生きることができません。
ですから、胸骨【きょうこつ】や肋骨【ろっこつ】で守れるように、この場所に位置しているのです。
ご存知の通り心臓は拍動【はくどう】といって、血液を循環させるためにドクドク動いています。
運動をしたり、緊張したときにはより早く動きます。
しかし、心臓の両横には肺、後ろには食道が通っています。
図で見るとこのような位置関係です。
そこで周りの臓器との摩擦を軽減させる仕組みが必要となります。
その摩擦軽減のための潤滑剤の働きをするのが心嚢【しんのう】という構造で、これは下図の様に説明できます。
ハートマークを心臓に見立てています。その周りを心嚢が取り囲んでいます。
空気の抜けたゴムボール(心嚢)にハートマーク(心臓)が包まれているような構造と考えて下さい。
この心嚢の中に、心膜液という潤滑剤の役割を果たすものが含まれているので、周囲の肺や食道と摩擦を軽減することができています。
ちなみに、この潤滑液の分泌が悪くなると、心膜の動きが悪くなって痛みを出し、心臓の正常な動きを邪魔します。
この状態を心膜炎と呼びます。
心臓の中の構造 弁や心房・心室の位置を解説
では続いて、心臓の中がどうなっているのか、確認してみましょう。
まずは、心臓の外観を図で見てみましょう。
心臓を裏側から見ると、このようになっています。
そして心臓の断面図がこちらです。
図のように、心臓には4つの部屋があります。
それぞれ、右心房【うしんぼう】、右心室【うしんしつ】、左心房【さしんぼう】、左心室【さしんしつ】と名前がついています。
心尖(しんせん)は、心臓の一番下の先っぽのことですが、ここは正常ではやや左側に傾いており、第五肋間に位置します。
心臓の筋肉の厚さは、左心室が12mm程度、右心室が3mm程度と圧倒的に、左心室の方が厚くなっています。
なぜ、これほどまでに厚さが違うのでしょうか。
それは、血液の流れを考えるとわかります。
心臓には、上大静脈、下大静脈から静脈血が流れてきます。
静脈血は、全身に酸素を供給しおえて、かわりに二酸化炭素を運搬している、いわば汚れた血液です。
その血液は、まずは右心房に入り、そこから右心室に流れていきます。
そして、右心室が収縮することで血液は肺へ流れていきます。
肺では二酸化炭素と酸素を交換して、血液をきれいにします。
続いて、肺静脈を経て左心房、左心室と流れていきます。
そして、左心室は全身に血液を送り出します。
つまり、右心室は肺に血液を送るだけで良いのですが、左心室は全身に血液を送らなければなりません。
仕事量が全く違うため、左右の心室でこれだけ厚さの違いがあるのです。
そして、4つの部屋にはそれぞれ弁がついており血液が逆流して、汚れた血液ときれいな血液が混ざることがないようにされています。
4つの弁にはそれぞれ名前がついており、三尖弁(右心房と右心室の弁)、肺動脈弁(右心室と肺動脈の弁)、僧帽弁(肺静脈と左心房の弁)、大動脈弁(左心室と大動脈の弁)といいます。
4つの弁の位置を、図で確認しておきましょう。
肺動脈弁と大動脈弁は、半月弁(はんげつべん)ともいいます。
半月弁はポケット状になっており、神経の調節なしでも自動的に逆流を防止することができます。
一方で、三尖弁と僧帽弁はパラシュートに似た形をしており、腱索【けんさく】と呼ばれる糸状の物を筋肉で引っ張って、弁の開け閉めをしています。
この弁の開閉には、自律神経が関わっています。
ですから、過度の緊張状態やストレスが続いたり、休息がとれていないと自律神経の働きが乱れて、心臓もうまく機能しづらくなります。
ちなみに、4つの弁の働きが悪くなり、開閉がうまくいかなると心臓弁膜症という病気になります。
心臓が左に傾いているのはなぜ?
心臓の位置を図で見てみると、先の方が左側に傾いているのがお分かりいただけたと思います。
なぜ、心臓は左に傾いた位置をとっているのでしょうか。
それは、人の進化の過程を考えてみるとわかります。
人は動物と違い、直立で生活します。
その時、脳に血液を送ろうとすると、重力に逆らって血液を押し上げねばならず、そのために血圧を上げなければなりません。
そして、血圧を上げるためには、心臓が強く収縮しなければなりません。
血液を脳や全身に送り出す左心室は、強く収縮するために壁を厚くし、左心室を大きくしてきました。
すると、最初は真っすぐだった心臓も、左心室が肥大化するごとに、だんだんと左に傾くようになっていったのです。
こうして、左に傾いた心臓となったのです。
ちなみに心臓が病的に肥大しすぎると、心不全などの病気の可能性があります。
血管が動脈硬化などで硬くなると、心臓からの血液が流れていきにくくなります。
そのため、心臓はなんとか血液を送り出そうとして、だんだんと肥大化してしまうのです。
まとめ
心臓の位置がどのあたりにあって、なぜ左に傾いているのか、なぜ4つの部屋に分かれているのかが、お分かりいただけたと思います。
いうまでもなく、心臓が無ければ血液は循環しなくなり、息絶えてしまいます。
その心臓の働きを助けるのは、全身の筋肉と動脈です。
血液は心臓のポンプ作用だけで循環しているのではなく、全身の筋肉の働きや動脈の弾性力を利用して循環しているのです。
動脈硬化に気をつけた食事や生活習慣、適度な運動を行うことは、心臓の負担をやわらげることにつながります。
1つしかない心臓ですから、大事にいたわってあげましょう。
参考書籍)病知らずの体のしくみ 著:河野俊彦