上行結腸の位置と痛みの原因とは?解剖図を用いて解説!

「上行結腸ってどこ?」と病院やテレビなどでこの言葉を見聞きされた方は、まず思われるのではないでしょうか。

上行結腸【じょうこうけっちょう】は大腸の一部で、お腹の中で右側に位置する臓器です。

文字で聞いても、イメージしにくいかもしれませんね。

 

結腸には上行結腸以外に、横行結腸【おうこうけっちょう】、下行結腸【かこうけっちょう】があります。

いずれも大腸の一部であり、その中で排泄される便が作られ、運搬されています。

 

そんな上行結腸にできやすい病気があります。

それは大腸憩室【だいちょうけいしつ】です。

憩室という名前を聞いても「?」になる方が多いと思います。

憩室とは、消化管の壁の一部が袋のように膨らむ病気のことです。

無症状であることも多いですが、憩室の数が多くなったり、ひどくなって炎症や出血が引き起こされると、様々な症状が出現します。

この消化管で起こる憩室の中でも、大腸憩室が最も多く、さらに大腸の中でも上行結腸に発生しやすいことが知られています。

大腸憩室によって、炎症や出血が引き起こされると、当然痛みを感じることもあります。

 

そこで今回は、上行結腸の位置を解剖図を用いて解説し、上行結腸の痛み原因となりうる大腸憩室について解説していきます。

 

上行結腸と痛み 大腸憩室とは?

冒頭でもお伝えした通り、大腸憩室とは大腸にできる袋状の膨らみのことです。

分かりやすいように図で確認してみましょう。

こちらが大腸憩室のイメージ図です。

上行結腸 位置 図 大腸憩室

ぽこっと袋状のできものができているところが憩室です。

大腸憩室は、消化管にできる憩室の中で最もできやすく、年齢が高くなるごとに発症のリスクが高まります。

そして、大腸憩室は上行結腸にできやすいのです。

上行結腸はこちらです。

上行結腸 位置 図

黄色くなっているところが上行結腸です(盲腸も一緒に黄色くなっています)。

大腸憩室は他の部位でできる憩室に比べて、炎症や出血を引き起こしやすいです。

また、穿孔といって消化管に穴が空いてしまう状態にもなりやすいです。

大腸憩室で炎症が起こることを大腸憩室炎と呼び、出血が起こることを大腸憩室出血と呼びますので、知っておいてください。

なお、憩室炎や穿孔に伴って、膿瘍と言って膿が溜まってしまう状態にもなりやすいので、注意が必要です。

 

大腸憩室には痛みを伴うこともありますが、それ以外の症状として、便秘や下痢などの便通異常やお腹の張りを訴えるケースもあります。

一方で、大腸憩室は無症状であることも多く、その場合は経過観察を医師からすすめられることもありますので、その辺りは主治医とよく相談してください。

 

大腸憩室の合併症として、胆石、食道裂孔ヘルニアが発生することがあります。

これらが一緒に発生することをSaint【サイント】三徴と呼びます。

これは肥満の人に多く見られる病気です。

 

上行結腸の位置を解剖図でチェック!

続いて上行結腸の位置を解剖図を用いて、より詳しく解説していきます。

まずは下図をごらんください。

上行結腸の痛み 位置 図

黄色く色が付いているところが上行結腸です。

上行結腸の一つ前の区画は盲腸と呼ばれる部位です。

上行結腸の次の区画は横行結腸で、続いて下行結腸、S状結腸、直腸と続いていきます。

この中で便が作られ運搬されていきます。

特に上行結腸では、重力に逆らって上に向かって内容物を運んでいくため、大きな力が必要になります。

上行結腸は内容物を運ぶために、3種類の動きを駆使しています。

実は、腸は意識していなくても勝手に動いてくれています。

その動きは、腸の中にある筋肉によってなされています。

腸の筋肉は手足の筋肉と違って意識的に動かすことができない、平滑筋【へいかつきん】という種類の筋肉で構成されています。

この平滑筋の働きによって、蠕動運動、分節運動、振子運動という3種類の動きを作り出し、内容物を先へと運んでいきます。

それぞれの運動については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

参照)上行結腸の3つの運動について解説!

 

上行結腸を横から見てみましょう。

上行結腸 位置 図 横 痛み

上図では分かりませんが、上行結腸は後腹壁に固定されており、自由に動くことはできません。

大腸の長さはおおよそ、1.5mほどの長さがあるとされています。

その中でも上行結腸は約15㎝ほどしかないため、結腸の中では比較的短い方です。

 

まとめ

上行結腸の痛みやその位置について、図を用いて解説してきました。

名前を聞くだけではよく分からない内臓の名前も、図で確認することでイメージしやすくなると思います。

その場所をイメージできるようになると、同じ腹痛でも「もしかしたら上行結腸が痛いのかも」と考えを巡らすことができるようになります。

 

また、上行結腸の痛みを引き起こす代表的な病気として、大腸憩室があるということがお分かりいただけたと思います。

上行結腸では、その他に大腸癌などその他の病気も引き起こされることがあります。

お腹に痛みを感じた時には、安易に自己判断することなく専門医を受診し、診察してもらいましょう。

病院に行くときには、

  1. どこが痛むか
  2. いつから痛みが出て、どのくらいの時間痛いか
  3. どんなときに痛むか
  4. 痛みの種類がどのようなものか(シクシク、ズキズキ、キリキリなど)
  5. 痛みにともなう症状があるか(発熱、嘔吐、下痢など)

参考)図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book)

ということを確認しておくと、痛みの原因を特定するのに役立ちます。