回盲弁、またの名をバウヒン弁と言うこの器官は、小腸と大腸の境目に位置する弁です。
回盲弁【かいもうべん】という名前は、小腸の一部である回腸と、大腸の一部である盲腸をつなぐ弁であることに由来します。
回盲弁の役割は、小腸の内容物が大腸へと流れていく量のコントロールです。
ぎゅっと締まったり、開いたりして、大腸へ流入していく内容物の量をコントロールしているのです。
このような回盲弁のある周囲一帯のことを、回盲部【かいもうぶ】とも呼びます。
小腸や大腸という名前は知っていても、その境目に回盲弁という器官があることは、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
また、名前はなんとなく知っていも、具体的にイメージするのは難しいかもしれません。
そこで今回は、回盲弁の位置や形、機能について、図を用いてわかりやすく解説していきたいと思います。
解剖学を学ぶと、おもしろい発見があるかもしれませんよ。
回盲弁の位置を図でチェック!
まずは、回盲弁の位置を図でチェックしていきましょう。
回盲弁の位置はこちらです。
赤丸で囲んでいるあたりに、回盲弁があります。
回盲弁の口側の臓器が、小腸の一部である回腸です。
回盲弁の肛門側の臓器が、大腸の一部である盲腸です。
回盲弁は、この2つをつなぎ合わせるところに位置しています。
「弁」と名前が付いているだけあって、開いたり閉じたりして、内容物が流れていく量を調節しています。
回盲弁はどんな形をしている?
では、回盲弁の断面図で、より詳しく観察してみましょう。
こちらが、回盲弁の断面図です。
上図のように弁を形成しています。
盲腸の先に尻尾のように飛び出ているのは、虫垂【ちゅうすい】です。
ここに炎症が起きると、虫垂炎【ちゅうすいえん】という病気になります。
虫垂炎になることを、一般的には「盲腸になった」と言われることもある、あの臓器です。
実は、この虫垂はリンパ組織としての働きがあります。
リンパ組織の働きをするということは、免疫をつかさどる器官ということです。
回盲弁が存在する理由は、この虫垂をうまく働かせるためです。
続いては、回盲弁の働きについて詳しく解説してきます。
回盲弁の機能とは?盲腸の働きと関係あり
回盲弁によって、回腸から盲腸へと内容物が流れていく量を制限しているということは、前述した通りです。
そして、盲腸の先は結腸を経て、肛門へとつながっています。
つまり、回腸から盲腸へと流れていく内容物は、あとは排泄するだけのものです。
では、なぜ回腸から盲腸へと流れていく量を、制限しなければならないのでしょうか。
実は、そこには盲腸にある虫垂が関係しています。
虫垂は排泄物の中に、病原菌などの有害なものが紛れていないかチェックしています。
ですから、いっぺんに内容物が押し寄せると、虫垂のチェックが追いつかなくなってしまいます。
そのため、回盲弁を使って少しずつ盲腸へと内容物を流し、チェックできるようになっているのです。
虫垂が排泄物である便をチェックするのには、理由があります。
仮に、排泄物の中に有害な菌がたくさん潜んでいたら、それを排泄した場所は汚染されてしまいます。
今のように文明が発展する前は、排泄物は川や海に流したり、土に埋めていました。
もし、有害な排泄物で水や土が汚染されてしまっては、人はそこに住むことができなくなってしまいます。
このような事態を防ぐために、有害な菌などがいないかチェックし、もし有害物があれば、体内で処理して排泄しているのです。
回盲弁は、人が自然の生態系の中で生きていくための、ひとつの知恵だったのです。
回盲弁の病気には、どのようなものがある?
回盲弁は、その構造上、腸重積【ちょうじゅうせき】を引き起こしやすいです。
腸重積とは、腸の一部が、肛門側の腸の中に入り込んでしまう病気のことです。
生後4か月〜2歳の子どもに多いので、子どもがいる方は、特に注意が必要です。
腸重積になり、病状が進行すると、いちごジャム状の粘っこい血便が出ますので、もしこのような便が出ていたら、すぐに病院を受診しましょう。
ただし、腸重積になっても必ず、このような血便が出るとは限りませんので、いつもと様子が違うなど気になる症状がある時には、早めに病院を受診するようにしましょう。
腸重積ついては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
参照)腸重積とは、どんな病気?
まとめ
回盲弁(バウヒン弁)の位置や機能について、図を用いて解説してきました。
図で見ることで、回盲弁の位置や形をイメージできるようになったのではないでしょうか。
われわれ現代人は、さまざまな廃棄物を生み出し、その廃棄物で地球の水や土、大気を汚染しています。
人は、自然の一部として生きていけるよう、虫垂や回盲弁という器官を用意し、自然の害になることがないようにしています。
今一度、自分たちの体から自然との共存の仕方を学び、考えてみてはいかがでしょうか。