腰骨【こしぼね】という言葉を使っている方っていますよね。
具体的にどこの骨のことを腰骨というか、ご存知でしょうか。
実は解剖学の教科書には「腰骨」という骨は載っていません。
腰まわりの骨が総称されて、腰骨と呼ばれているようです。
腰骨というと、ベルトをひっかっけるときに使われる腸骨【ちょうこつ】の一部である上前腸骨棘【じょうぜんちょうこつきょく】のことを、私は思い浮かべます。
しかし、人によっては背骨の一部である腰椎【ようつい】や、骨盤の一部である腸骨稜【ちょうこつりょう】を思い浮かべる人もいると思います。
そこで今回は、腰骨と呼ばれる腰まわりの骨にどのようなものがあるのか解説していきます。
また、これらの骨と強い関係性がある内臓についても、お伝えしていきます。
腰骨はどこの骨のこと?腰まわりの骨について解説!
腰骨と呼ばれるのは、骨盤の一部である上前腸骨棘【じょうぜんちょうこつきょく】が、まずひとつ考えられます。
骨盤は左右一対の寛骨【かんこつ】と、その中央にある仙骨【せんこつ】、尾骨【びこつ】によって構成されます。
これらを図で確認してみましょう。
こちらが骨盤です。
左右の寛骨です。
仙骨です。
こちらが尾骨です。
そして、寛骨は腸骨、坐骨、恥骨という3つの骨が組み合わさってできています。
このうち、腸骨の一部に上前腸骨棘があります。
上前腸骨棘の位置を図で確認してみましょう。
赤色に色づけされているところが腸骨で、赤丸のところが上前腸骨棘です。
上前腸骨棘については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
上前腸骨棘は体表からみても、でっぱっているのでベルトを引っかけるのに使われることもあります。
このでっぱりのことを腰骨と表現する人も多いです。
このほかに腰椎【ようつい】も腰骨と呼ばれる場所です。
腰椎は脊柱(いわゆる背骨のこと)の一部で、腰のあたりにある骨のことです。
腰椎を図で確認してみましょう。赤で囲っているところが腰椎です。
腰椎は5つの骨で構成されています。
前方にわん曲しながら、5つの骨が積み木のように重なっています。
腰椎は腰にある骨なので、その場所からいうと、まさしく腰骨と言うこともできるでしょう。
他には、腸骨稜【ちょうこつりょう】が腰骨と呼ばれることもあります。
腸骨稜は名前の通り、腸骨の端をなすところです。
腸骨の曲線に沿った下図で示したところが腸骨稜です。
腸骨稜も場所としては、腰にある骨なので腰骨と呼んでもおかしくないでしょう。
腸骨稜については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
参照)腸骨稜について
上記の3つの部位が腰骨と呼ばれる代表的な部位です。
ひとくちに腰骨といっても、人によって示しているものが違う場合があるので、腰骨という言葉が会話のなかに出てきたら、具体的にどこのことなのか聞いてみないとわからないですね。
腰骨と内臓の関係とは?
腰骨と呼ばれる代表的な部位は、上前腸骨棘、腰椎、腸骨稜であることがお分かりいただけたと思います。
続いては、これらの部位が内臓と、どのような関わりがあるのかについて解説していきます。
まずは、上前腸骨棘、腸骨稜のある骨盤についてです。
骨盤は人体の骨の中でも特徴的な形をしています。
人の体は骨盤に限らず、意味があってその形になっています。
画像を見ても分かるとおり骨盤は何かを囲むような構造をしています。
お分かりの方も多いと思いますが、骨盤の内側には腸などの内臓が存在します。
内臓は人の生命活動にとって無くてはならない存在ですが、やわらかい組織で作られており衝撃には弱いです。
そのため、骨盤を外側からガードするように配置し、衝撃に弱い内臓を守っているのです。
骨盤の役割はそれだけではありません。
人は起きて活動している間、常に重力にさらされています。
重力によって腸などの内臓は下へ、下へと引き下げられています。
もちろん、その位置がずれないように組織によってある程度、保持されています。
しかし、それを下支えするところがなくては、内臓を支える組織に負担がかかり続けてしまいます。
その下支えをするのが骨盤です。
骨盤の形をよく見ると、おわんのような形にも見えると思います。
骨盤をおわんに例えると、底のところには骨盤底筋という筋肉が張っています。
骨盤と骨盤底筋によって、重力によって下がってくる内臓を下から支えているのです。
骨盤底筋は、骨盤の底をなしています。
下図で着色されているところが、骨盤底筋です。
腰椎と腸にも関わりがあります。
腰椎には腸腰筋という筋肉が付着しているのですが、この筋肉は腸のすぐ後ろにあります。
腸はみずから動くことによって、内容物である便を動かしています。
しかし、腸腰筋が硬くなり動きが悪くなると、近くにある腸もスムーズに動くことができなくなります。
その結果、便もスムーズに動きにくくなり便秘などの症状をきたすことがあります。
ですから、腸腰筋を適度に刺激し普段から動かしていくことが大切です。
腸腰筋を使うのに手軽でよい運動は、大またでのウォーキングです。
大またで歩くことで、腸腰筋は伸びたり縮んだりを繰り返します。
それにより腸腰筋は柔軟性を保つことができますし、それが腸への刺激にもつながります。
ですから便秘症状に悩まれている方は、大またのウォーキングを取り入れてみるとよいでしょう。
一見すると関係なさそうな腰骨と腸などの内臓ですが、体の仕組みを詳しくみていくとこのような繋がりがあるのです。
まとめ
腰骨という骨は解剖学の教科書には存在せず、上前腸骨棘、腰椎、腸骨稜などのことを総称して呼んでいるものだということが、お分かりいただけたと思います。
また、関係のなさそうな腰骨と内臓も、体の作りを深く見ていくと影響しあっています。
人の体にある臓器や骨は意味があってその形になり、その場所に配置されています。
それは長い進化の過程で生み出されたものですから、とても効率的に作られています。
内臓の解剖学についても勉強してみると、おもしろい発見がいろいろありますよ。