腸骨稜と書いて「ちょうこつりょう」と読みます。
腸骨稜は骨盤の一部の名前です。
そもそも稜【りょう】とは、物の「かど」や「すみ」のことを言います。
そして、骨盤は腸骨、恥骨、坐骨という3つの骨で構成されています。
つまり、腸骨稜という名前を読み解くと、骨盤を構成する腸骨の「すみっこ」の場所という意味になります。
実際、腸骨稜は腸骨の一番端っこをなすところにあります。
このような解剖学の名前は、言葉で説明されてもいまいちピンとこないものです。
そこで今回は、腸骨稜の位置を解剖図を用いて解説し、それが腸を始めとする内臓とどのような関わりがあるのかについて解説していきます。
腸骨稜の位置を解剖図でチェック
まずは、腸骨稜のある骨盤の位置をチェックしてみましょう。
骨盤は腸骨、恥骨、坐骨で構成されます。(赤色が腸骨、青色が恥骨、黄色が坐骨を示しています。)
上図で赤色で示した腸骨の中に腸骨稜があります。
腸骨についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。
参照)腸骨の場所や働きを解説!
では、腸骨稜の具体的な位置を図で確認してみましょう。
赤線を引いているところが腸骨稜です。
前端は上前腸骨棘【じょうぜんちょうこつきょく】、後端は上後腸骨棘【じょうごちょうこつきょく】です。
この2つの骨棘の間に、弓状に曲線を描くように腸骨稜と呼ばれる場所があります。
腸骨稜は体表からも触れることができます。
わき腹のあたりに手を当てると、肋骨の下端から拳1つくらい下のあたりで触知することができます。
赤線のあたりで触れることができます。
腸骨稜と腸の関係
腸骨稜のある腸骨はとても特徴的な形をしています。
上に弧を描くように広がり、大きく広がった羽のようにも見えます。
この大きく広がった腸骨の形には、重要な役割があります。
それは腸骨の内側にあるやわらかい内臓を守る役割です。
内臓は柔軟に動くことで、内容物を消化、吸収、そして運んでいます。
ですが、そのやわらかさゆえに外からの衝撃には弱いです。
そこで、硬くて丈夫な腸骨が大きく広がることで、腸をはじめとした内臓を保護しているのです。
腸骨と内臓の位置関係を確認しておきましょう。
このように腸骨と内臓は非常に近い位置にあります。
腸骨などの骨盤を構成する骨の内側には、内臓がびっしりと詰まっています。
ですから、事故などによって骨盤を骨折してしまうと、内臓にも損傷が及びやすく命に関わる状態になることもしばしばです。
普段は外力から守ってくれている骨盤ですが、骨盤が骨折してしまうとそれによって内臓が傷つけられてしまう諸刃の剣といえます。
腸骨稜につく筋肉
腸骨稜の周辺に付着する筋肉で代表的なものには以下の筋肉があります。
- 腹横筋【ふくおうきん】
- 内腹斜筋【ないふくしゃきん】
- 外腹斜筋【がいふくしゃきん】
- 大臀筋【だいでんきん】
- 中臀筋【ちゅうでんきん】
- 大腿筋膜張筋【だいたいきんまくちょうきん】
- 腰方形筋【ようほうけいきん】
- 腰腸肋筋【ようちょうろくきん】
腹筋の一部や脚の方に伸びていく筋肉など、さまざまな筋肉が付着することがお分かりいただけけると思います。
骨盤は、上半身の動きを下半身に伝える作用があります。
反対に下半身の動きを上半身に伝える作用もあります。
体をうまく動かすためには、上半身と下半身が協調する必要があるので、骨盤は動きの面でも重要な役割を担っているのです。
ヤコビー線と腸骨稜
左右の腸骨稜を結んだ線のことをヤコビー線【やこびーせん】と言います。
ヤコビー線の位置を図で見てみましょう。
ヤコビー線は第四腰椎の棘突起上を通過します。
ですから、ヤコビー線を境にして、第四腰椎、第五腰椎を分けることができます。
体の中でランドマーク(目印)として使われます。
医療現場では、腰椎麻酔などの時にこのヤコビー線が目印として使われます。
ヤコビー線については、こちらの記事でもより詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
参照)ヤコビー線について
まとめ
腸骨稜の位置について図を用いてお伝えしてきました。
腸骨稜とはどこのことなのか、お分かりいただけたと思います。
また腸骨稜のある骨盤は体の中心にあり、内臓を守ったり、体の動きの要となる場所であることもお分かりいただけたと思います。
体の各部位の名前は理由があってその名前が付けられています。
例えば腸骨稜は、腸骨の「隅っこ」あるいは「かど」にあるので、「隅っこ」や「かど」を意味する「稜」という文字が使われています。
このように、体の部位の名前を考えてみるとそれぞれ理由があるので、勉強してみると新しい発見があって面白いですよ。