仙腸関節【せんちょうかんせつ】という関節をご存知でしょうか。
最近は、骨盤のゆがみについての話題が、テレビや雑誌をにぎわしていますが、それに伴って仙腸関節という言葉も知られるようになりました。
仙腸関節は、骨盤の一部にある関節のことです。
骨盤は、いくつかの骨が組み合わさってできており、その一部が関節を形成しています。
「関節」と名前が付いているだけあって、膝関節や肘関節などと同様に動きます。
しかし、その動く範囲はわずかで、約1㎜〜2㎜程度とされています。
関節といっても膝や肘のように大きく動くわけではないのです。
ところで、仙腸関節の詳しい位置を知っているという方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
医療の専門家でない限り、おそらくほとんどの方は、仙腸関節の位置をご存知ないと思います。
そこで今回は、仙腸関節の位置を解剖図を交えて解説し、その痛みの原因や治療法についても解説していきます。
仙腸関節の位置を図でチェック!
まずは仙腸関節がどこにあるのか、画像で確認しましょう。
仙腸関節は下図で、赤線を引いているところです。
後ろから見ると、このような位置に仙腸関節があります。
仙腸関節は仙骨【せんこつ】と、寛骨【かんこつ】によって作られます。
仙骨は、下図で赤丸で囲んでいるところです。
下図は寛骨です。
仙骨と寛骨がちょうど当たるところが、仙腸関節です。
成人の仙腸関節の関節面は、凹凸があります。
その周りには、多くの靭帯があり、仙腸関節の固定性を高めています。
仙腸関節は、股関節や肩関節のように動くことを目的に作られたものではなく、固定性を重視した作りになっています。
それは、上半身と下半身をつなぐちょうど中間にあるからこそです。
特に高齢になれば、この関節はくっついてしまっている人もいます。
そんな関節を「ゆがみをなおす」と言って無理に動かすことは、危険を伴うということを知っておかなければなりません。
仙腸関節が痛くなるのは何が原因?
まず、痛みの原因を探るためには、
- どこが痛むか
- いつから痛みが出て、どのくらいの時間痛いか
- どんなときに痛むか
- 痛みの種類がどのようなものか
- 痛みにともなう症状があるか(発熱、嘔吐、下痢など)
参考)図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book)
ということを確認しておくと、痛みの原因を特定するのに役立ちます。
仙腸関節の痛みとして多いのは、何らかの強い衝撃が加わることで、仙腸関節の周りの靭帯が損傷して発生するものです。
何らかの強い衝撃というのは、事故や転倒などが多いでしょう。
また、一時的には弱い力でも、それが繰り返されると、周囲の筋肉や関節自体が炎症を起こすこともあります。
いわゆる、使い痛みのような状態です。
こちらの痛みの場合、安静にしておけば痛みが引いてくることも多いです。
しかしその後、また同じような運動を繰り返していると、痛みが再発する恐れがあります。
理学療法士など、専門家に運動方法の指導を受けておいた方が良いでしょう。
注意しておかなければならないのは、仙腸関節の痛みは、仙腸関節の以外の場所にも発生するということです。
具体的には、お尻、鼠蹊部(脚の付け根のあたり)、脚などです。
これらの原因のある部位と違うところに出現する痛みのことを関連痛【かんれんつう】と呼びます。
痛みが仙腸関節からくるものなのか、そうでないのかを調べるには、仙腸関節を圧迫する検査を行います。
仙腸関節を圧迫すると、関節のズレが増強され、症状が強く出ます。
これらの検査も、理学療法士などの専門家にやってもらうようにしましょう。
仙腸関節の治療 痛みを取り除くには?
仙腸関節の痛みには、まずは骨盤ベルトを使って、仙腸関節のズレを少なくする治療法など、手術以外の治療法が検討されます。
痛みがひどい場合には、仙腸関節に局所麻酔を行うブロック注射なども行われます。
理学療法士等の行う徒手療法も有効で、有名なものには、AKA博田法【えーけーえーはかたほう】というものがあります。
これらの治療法を行っても症状が改善しない場合は、手術によって仙腸関節を固定する方法もあります。
いずれにしても、仙腸関節痛の治療は、まず医療機関に行くようにしましょう。
下手にマッサージなどするとかえって悪化することもあるので、注意が必要です。
まとめ
仙腸関節の位置を図で解説し、その痛みの原因や治療法を解説してきました。
解剖図で観察することで、わかりにくかった仙腸関節の場所をイメージすることができたのではないでしょうか。
最近は、テレビや雑誌などで「骨盤のゆがみをなおす」ということが盛んに訴えられています。
はたして、本当にゆがみが治るのでしょうか。
そもそも人の体は、どこかしらゆがんでいます。
そのゆがみでバランスをとっていると考えることもできます。
ゆがみをとることが、良いことなのかどうなのかは何とも言えません。
医療機関では、仙腸関節の過剰な動きを抑えるために骨盤ベルトが使われることが多いです。
まずは、過剰な動きを抑えることが第一選択になるのではないでしょうか。
いずれにしても、気になる痛みがある場合は、まずは医療機関を受診するようにしましょう。