尾骨【びこつ】という骨をご存知でしょうか。
一般的には、尾てい骨と呼ばれることもあります。
尾骨は骨盤の一部であり、骨格模型を見ると、しっぽのように伸びている骨です。
ヒトの祖先は、尾骨の先にしっぽがついていたのでしょう。
ですが、ヒトには尻尾はありません。
では現代人にとって尾骨の存在にはどのような意味があるのでしょうか。
実は尾骨には、骨盤底筋を構成する筋肉が付着します。
恥骨尾骨筋【ちこつびこつきん】や腸骨尾骨筋【ちょうこつびこつきん】などです。
これらの筋肉は、腸をはじめとする内臓を下から支える筋肉です。
尾骨につく骨盤底筋は、内臓の受け皿になっているのです。
このように尻尾のないヒトにとっても、尾骨には重要な機能があるのです。
ところで、この尾骨という骨は骨折しやすい骨でもあります。
尻もちをつくように転んでしまったときに、骨折しやすいです。
特に高齢者で骨折する人が多いですが、案外、若い人でも骨折することがあるので注意が必要です。
そこで今回は、尾骨の位置を解剖図を用いて、わかりやすくお伝えし、その痛みの原因や腸との関連について解説していきます。
尾骨の位置を図でチェック!
尾骨は骨盤の一部です。
その骨盤は、左右の寛骨、仙骨、そして尾骨で構成されます。
こちらが、寛骨【かんこつ】です。
赤丸で囲んでいるところが、仙骨です。
黄色く示しているところが、尾骨です。
骨だけ見ると、しっぽみたいに見えますね。
これだけ、小さく細い骨なので、転倒などの衝撃によって骨折してしまいます。
高齢者のように、骨自体が弱くなっていれば、なおさらです。
骨折したものをそのままにしておくと、尾骨が曲がったまま固定されることもあります。
尾骨の痛みの原因とは?
尾骨の周辺に痛みが出る原因は、骨折や筋肉痛、神経痛などが代表的です。
その他に注意しなければならないのは、腸から発せられる痛みを尾骨の痛みとして感じているときです。
大腸癌による痛みを、尾骨の痛みと思われていた方もいらっしゃいます。
癌は治療法の研究が進み、徐々に克服することもできる病気となってきています。
しかし、早期発見、早期治療ができてこそ、回復の確率を高めることができます。
本当に尾骨の痛みかどうかわからない方は、まずは、病院で検査を受けてみることをお勧めします。
内臓を下から支える骨盤底筋
尾骨に付着する筋肉に、恥骨尾骨筋や腸骨尾骨筋などがあることは、冒頭でもお伝えしました。
これらの筋肉は、骨盤底筋【こつばんていきん】と呼ばれる筋肉です。
この骨盤底筋は、排便時にいきむのに非常に重要な筋肉です。
お腹の圧力のことを腹圧【ふくあつ】と言いますが、いきむ時には、この腹圧を高くしなければなりません。
その時に必要なのが、骨盤底筋の働きです。
骨盤底筋を解剖図で確認してみましょう。
こちらは、骨盤を上からのぞきこむように見た図です。
図からもわかるように骨盤底筋は、その名の通り骨盤の底を支える筋肉です。
お腹にグッと力を入れた時、骨盤底筋がその力を下支えすることにより、はじめて腹圧を高めることができます。
わかりやすいように、図でも確認してみましょう。
骨盤底筋は、出産を経験した女性は年齢とともに弱くなりやすい筋肉です。
骨盤底筋が弱ることで、尿モレも起こりやすくなります。
骨盤底筋を鍛えるためには、骨盤底筋体操を行うと良いです。
骨盤底筋の鍛え方は、下のイラストをごらんください。
ポイントは
- 膣や肛門の筋肉を10秒ほど引き締めた後、 緩めて20~30秒リラックスする。
- 「締める、緩める」の繰り返し10回で1セット とし、1日5セット行う。
- 毎日継続することが大切
以上の3点です。
イラストにもある通り、寝ころがりながらや、イスに座りながらなど、生活の中でその姿勢をとった時に行っていくとよいです。
「さぁやろう!」と気合を入れてやるのは、最初のうちは良いですが、時間が経つとだんだんとだらけてきてしまい、継続しにくいです。
それよりも生活の中で、気づいた時にやっていくという方が長続きしやすいです。
まとめ
尾骨(尾てい骨)の位置を図で解説してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか。
尾骨は普段、気にかけることのない地味な骨ですが、骨盤底筋の働きに関わる重要な骨です。
骨盤底筋は内臓を下から支えてくれる重要な筋肉です。
つまり、尾骨の存在によって骨盤底筋がうまく働き内臓がそれぞれの位置を保持するのに役立っているということです。
高齢になると転倒してしまう人が多いです。
尻もちをつくような形で転倒すると尾骨は圧迫をうけ骨折することがあります。
一番大切なのは転倒しないように気をつけることですが、それでも万一、転倒・骨折してしまった場合は、病院を受診してきちんと治療しておきましょう。