腹水とは?腹水がたまった時の症状と病気の原因について

腹水【ふくすい】は字の通り、お腹に水が溜まった状態のことです。

何がしかの原因により、お腹にある血管やリンパ管から水成分が漏れ出すと、腹水が発生します。

腹水になると、お腹の張りが出て不快な圧迫感がでます。

また、胃が圧迫されることにより、食欲不振になったり、さらにその上に位置する肺にまで圧迫が及ぶと、呼吸困難感まで出現することもあります。

そんな腹水には、原因となっている病気があります。

そのため患者が腹水になると、医師はその原因について考え巡らせます。

腹水には赤色や白色などの色が付いていることもあり、この色の変化でも腹水が起こっている原因を予測することができます。

 

そこで今回は、腹水とはどのようなもので、どのような病気が原因となって発生するのかについて解説していきます。

 

腹水とは

まずは、そもそも腹水とは何なのかについてお伝えします。

体幹部(胴体のことです)には2つの腔【くう】があります。

腔とは臓器が入っている空間のことだと考えてください。

その2つの腔とは、胸腔【きょうくう】腹腔【ふっくう】です。

下の図で肺があるところが胸腔で、横隔膜の下にあるのが腹腔です。

腹水がたまる病気 症状

腹腔内には、もともとわずかに体液が存在します(約30〜40ml)。

通常であれば、30〜40ml程度の体液が存在しているだけですが、さまざまな病気が原因となり、腹腔内の体液量が異常に増えた状態を腹水といいます。

 

腹水が溜まるとこんな症状が

腹水の症状については、冒頭でも少し触れました。

主なものは、腹部膨満感(お腹の張り)胃の圧迫による食欲不振肺の圧迫による呼吸困難感むくみや血行不良などです。

 

胃の圧迫感は食欲不振を招き、食事量が不足すると栄養失調になることもあります。

呼吸困難状態が続くと、全身の細胞の酸素や二酸化炭素のガス交換がうまく行われず、全身状態が悪化します。

また全身の細胞は、血液により栄養を受け老廃物を流しているので、血行不良が起こると全身の細胞の状態が悪くなります。

 

このように腹水の状態が続くと、身の機能低下が起こってしまうのです。

お腹に水が溜まるだけと思って甘く考えていると、痛み目をみることになりかねません。

 

腹水の分類 腹水は2種類ある

腹水は、その性状から2種類に分けることができます。

1つは漏出液(ろうしゅつえき)が溜まる腹水で、もう1つは滲出液(しんしゅつえき)が溜まる腹水です。

 

漏出液は非炎症性の病気で起こります。代表的なものに肝硬変右心不全などがあります。

一方、滲出液は炎症性、腫瘍性の病気で起こります。代表的なものに腹膜炎急性膵炎ガンなどがあります。

 

腹水はその原因ごとに、水の色や、質感が違います。

以下に腹水が溜まる病気について、より詳しくご紹介していきます。

 

腹水が溜まる病気 漏出性腹水はなぜ起こる

まず非炎症性の漏出液は、腹腔内の血管から水成分が漏れ出して起こるものです。

漏出液は透明もしくは、淡黄色で凝固しにくい(固まりにくい)という特徴があります。

 

非炎症性の漏出液は、肝硬変など肝臓の病気や右心不全など心臓の病気により、門脈(もんみゃく)という血管の圧力が高まること=「門脈圧の亢進」によって起こります。

漏出性の腹水が起こる原因は、この「門脈圧の亢進」によって起こるものが最も多いです。

門脈は腸などの消化管と肝臓をつなぐ血管です。

門脈は下画像の血管(青色のところ)です。

腹水が溜まる病気 症状 門脈

 

この他に、血中アルブミン濃度の低下によって膠質浸透圧が低下し、起こる漏出性の腹水があります。

アルブミンは血管内に水成分を保持する働きがあるので、ルブミンが不足すると、血管から水成分が漏れ出てしまうのです。

 

また血液中の血漿量が低下することでも、漏出性の腹水が起こります。

血漿とは、血液の液体成分のことです。

血漿量が低下すると、体は体内に水分を保持しようとして腎臓から、本来おしっこにする水分を再吸収します。

過剰に再吸収されると、腹水がおこります。

以上が非炎症性の漏出液の原因についてです。

 

腹水が溜まる病気 滲出性腹水はなぜ起こる

炎症性、腫瘍性の滲出液の特徴は、混濁していて、凝固しやすいということです。

滲出液が溜まる原因は、血管の透過性が亢進(血管から血球成分が出て行きやすくなること)やリンパ管が詰まるなどして、リンパの流れが悪くなることで起こります。

 

血管の透過性亢進は腹膜炎などにより、細菌感染が起こると、その細菌と闘うために起こる反応です。

また、リンパの流れが悪くなる原因の1つは、悪性腫瘍がリンパ管に詰まることです。

つまり滲出性の腹水は、細菌感染や悪性腫瘍(ガン)がリンパ節に転移することで起こるのです。

 

腹水の色や性状で鑑別診断

ここまで漏出性、滲出性の腹水それぞれについてご紹介してきましたが、腹水の色を見ることで、より詳しく腹水になる原因を分析することができます。

以下に、色ごとに予測される腹水の原因についてお伝えしていきます。

 

腹水の色 透明〜淡黄色

腹水の色が、透明から淡黄色である場合、漏出性の腹水であると考えられます。

この場合、原因として考えられる代表的な病気は、

  • 肝硬変
  • 門脈圧亢進
  • 右心不全
  • ネフローゼ症候群

などがあります。

 

腹水の色 赤色

腹水の色が赤色の場合は、滲出性の腹水と考えられます。

赤色は血液の色です。

赤色の腹水の原因として考えられるのは、

  • 癌性腹膜炎
  • 急性膵炎
  • 腹腔内出血

などです。

 

腹水の色 暗いオレンジ色

腹水の色が暗いオレンジ色の場合は、滲出性の腹水と考えられます。

原因として考えられるのは、

  • 化膿性腹膜炎

などです。

 

腹水の色 暗褐色

腹水の色が暗褐色の場合は、滲出性の腹水と考えられます。

暗褐色になる原因は、胆汁の色です。

原因として考えられるのは、

  • 胆汁性腹膜炎
  • 胆のう胆管穿孔(胆のうや胆管に穴が開くこと)

などです。

 

腹水の色 クリーム色(白)

腹水の色が白いクリーム色の場合は、滲出性の腹水と考えられます。

原因としては、

  • リンパ管のつまり
  • フィラリア症

などです。

 

まとめ

腹水を起こす病気や色による判定法、腹水によって起こる症状について解説してきました。

腹水を起こす原因には、肝臓や心臓の病気、細菌感染、悪性腫瘍などがあることがお分かりいただけたと思います。

腹水を放置していると、栄養失調になったり、呼吸機能、血流が悪くなるなどして、全身状態が悪化しかねません。

 

実際に腹水かどうかであるといったことや、腹水の原因について判断するには、医師の診察を受けないといけません。

今回の記事は、もし腹水になった時に医師の話を理解するための補助にしてください。

くれぐれも自己判断することがないようにして、専門医の診断を受けましょう。