右肩の痛みが続くと、五十肩や筋肉を痛めたのかな、と不安になるかもしれません。
実際に右肩の痛みは、怪我、使い痛み、加齢による変化などで関節炎になることで発生することが多いです。
しかし、右肩の痛みは、肝臓や胆のうなど、体の右側にある臓器が原因となっている可能性もあるので、注意が必要です。
これらの内臓が原因となって、右肩の痛みが発生している場合には、いくらマッサージを受けても、ストレッチをしても右肩の痛みが解消することはありません。
病院で受診する科も整形外科ではなく、内科になります。
なぜ肝臓や胆のうの病気が右肩の痛みにつながるかというと、これには関連痛というものが影響します。
関連痛とは、問題のある場所とは別の場所に発生する痛みのことです。
皮膚の知覚神経は敏感で、痛みとなる刺激が加わると、的確に場所がわかりますが、内臓の知覚神経はそこまで、正確ではありません。
内臓の痛みの神経回路は、脳に伝わるまでに混線を起こし、全く別の場所の痛みとして感じてしまうのです。
これを関連痛と言います。
そして、この関連痛は臓器ごとに痛みやすい場所がある程度決まっているため、医師が患者を診察する時にも、関連痛の影響を頭に置いています。
右肩の痛みの場合は、肝臓や胆のうに病気がある可能性が考えられます。
そこで今回は、右肩に痛みを送る肝臓や胆のうの病気について解説していきます。
もくじ
右肩の痛み 肝臓、胆のうの病気が原因の可能性あり
まずは肝臓の位置から確認していきましょう。
肝臓は体の中でこの部位に位置します。
肝臓の位置や機能について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
肝臓の疾患について その種類を解説
「沈黙の臓器」と呼ばれ、機能障害が進行しても、なかなか症状が出ないのが肝臓ですが、肝臓の機能は生命維持に欠かせないものとなっています。
肝臓の機能は、細かく分けると500以上もあると言われていますが、主なものは、代謝、解毒、免疫、胆汁の生成などです。
代謝とは、糖、脂質、タンパク質、ビタミンなど健康な体に欠かせない栄養素を分解したり、体内で使うことができる形に合成したり、また必要な時に使えるように貯蔵しておく機能のことです。
解毒とは、体にとって有害など毒素を分解し、排泄することです。
主な有害物質は、アンモニア、アルコール、各種薬物、毒素などがあります。
免疫とは、体内に侵入してきた、細菌やウイルスなどから体を守る機能のことです。
人は腸から栄養を吸収しますが、同時に細菌やウイルスなども紛れ込んでいることがあります。
腸から門脈を通して、最初にたどり着く臓器は肝臓なので、そこで、有害な細菌やウイルスをやっつけて体内での増殖を防ぐというわけです。
胆汁は胆のうに貯蔵される消化液ですが、生成は肝臓で行われています。
胆汁には、脂肪を吸収しやすい状態にする機能があります。
肝臓の病気は、ウイルス性の肝炎とウイルス以外が原因になる肝臓病に分けられる
ウイルス性の肝炎には、急性肝炎と慢性肝炎があります。
急性肝炎では、発熱、吐き気、だるさ、黄疸、食欲低下など目に見えて分かる症状が出るので、肝炎に気付きやすいです。
しかし、慢性肝炎になると、症状がほとんどなく、あっても軽い疲労感程度なので、肝炎に気付きにくく、病気が進行するケースもあります。
肝炎が治療されないまま放っておかれると、肝硬変肝臓癌に発展し、胃や食道などからの出血により、致死的になる恐れがあります。
ウイルス以外が原因になる肝臓病は、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変などがありますがこれらはあまり多くなく、近年増えているのは、脂肪肝、アルコール性肝障害、薬剤性肝障害などの日常の生活習慣に起因する病気です。
脂肪肝は、脂肪の摂取量が過多となり、肝臓が脂肪を処理しきれず、肝細胞の中に脂肪がたまった状態を指します。
脂肪肝はアルコール性のものと、非アルコール性のものがあります。
非アルコール性のものになりやすい人は、脂っこい食べ物が好きだったり、肥満、糖尿病がベースにある人です。
アルコール性肝障害とは、字の通りアルコールを多量に摂取しすぎることで、肝臓の処理が追いつかず肝臓の細胞が破壊されることで起こる肝臓の病気です。
脂肪肝、肝線維症から始まり、飲酒を止めずに悪化すると肝炎や肝硬変、肝臓癌に進行してしまいます。
薬剤性肝障害とは、薬物やサプリメントなどにより肝細胞が障害を受けたり、胆汁の流れが滞ることで肝臓の機能が低下する病気です。
前述の通り、肝臓は代謝をする臓器です。薬物やサプリメントも代謝するので、その影響を受けやすいです。
症状としては、発熱、発疹、黄疸、かゆみ、だるさなどが出てきます。
原因となる薬は、抗菌薬や解熱鎮痛薬などが多いです。しかし、健康食品やサプリメント、漢方薬などでも発症することがあるので注意が必要です。
右肩の痛みは胆のうの痛みからくる?胆のうの病気について解説
続いて胆のうの病気について解説していきます。
まずは胆のうの位置を確認していきましょう。
胆のうは肝臓の下に隠れるように位置しています。
胆のうの機能は胆汁を貯めることです。
胆汁は脂肪を乳化【にゅうか】といって、吸収しやすくするために使われる液体です。
胆汁は老廃物であるビリルビンや、コレステロールを合成してできる胆汁酸などからできます。
胆石
胆石とは、胆のうにできる結石です。
胆石は胆のう内にできるもの、肝臓内にできるもの、胆管(胆のうからの管)にできるものがあり、最も多いのは胆のう内にできるもので、全体の約70%を占めます。
症状は、胆のうの周囲の痛みや、みぞおちの痛み、そして右肩の痛みです。その他、吐き気、嘔吐などがあります。
胆のう炎・胆管炎
胆のうや胆管に結石が詰まることで起こる炎症のことです。
発熱や腹痛が起こります。
胆のう炎の場合、肝臓からの胆汁がそのまま分泌されるますが、胆管炎のように胆管自体が結石で詰まると、胆汁の分泌が完全にストップしてしまうので、重症化しやすいです。
胆のう癌、胆管癌
いずれも初期症状に乏しいため、発見した時にはすでに進行癌となっていることが多いため、予後は不良です。
胆のう癌は高齢女性に発症することが多く、胆管癌は、高齢男性に発症することが多いです。
治療は外科手術によって、胆のう、胆管自体を切除することが多いです。
右肩の付け根の痛みは肝臓、胆のうの関連痛かも
冒頭でもお伝えした通り、関連痛は問題のある部位とは別のところに痛みを起こします。
では、肝臓と胆のうの右肩にある関連痛領域について図で確認してみましょう。
まずは肝臓の関連痛領域からです。
肝臓の関連痛領域は、右肩に加えて、右の季肋部【きろくぶ】(わき腹のあたり)、右の背中にも出ることがあります。
これらの関連痛は必ずすべて出るというわけではありません。
人によって、1ヶ所だけに出ることもあれば、3ヶ所すべてに出ることもあります。
また関連痛が起こらない人もいるので、これらの部位に痛みがなかったからといって、肝臓に問題がないというわけではありません。
関連痛は医師が病気を診断する時などに、あくまでも補助として用いられるものです。
続いて胆のうの関連痛領域です。
胆のうの関連痛領域は、右肩のみです。
肩から首筋にかけて、体の前面、後面両方で出ます。
胆のうの関連痛も肝臓ものものと同様に、胆のうに問題があっても、関連痛が出る人とでない人がいます。
関連痛がないからといって、胆のうに問題がないということにはなりません。
ここでご紹介してきた関連痛は、多くの人にとって、関連痛が出やすい場所を示したものにすぎません
関連痛は出てくる場所は、人によって微妙に違います。
その点は知っておいてください。
右肩の痛みから頭痛が起こることも 解消のためには筋肉のコリをとる
肩や首の痛み・コリから頭痛になることは、頭痛持ちの方なら経験的に知っている方も多いかもしれません。
事実、肩や首の痛み・コリから頭痛症状が出ることはあります。
ここにも関連痛が影響しています。
頭痛の原因が肩や首にある場合、肩首の筋肉を指で圧迫すると、頭痛の症状が再現されます。
そのまま圧迫を数十秒続けると、頭痛症状は解消されていきます。
これは、筋肉のコリが影響して頭痛になっているのです。
筋肉は圧迫を加え続けられると、緊張を緩ませる生理的な性質を持っています。
指で圧迫を加えることで、肩首の筋肉の緊張が緩みます。
原因となっていた肩首のコリが解消すると、そこからの関連痛であった頭痛も解消するというわけです。
まとめ
右肩から肩の付け根の痛みの原因について、肝臓や胆のうといった内臓の病気を中心に解説してきました。
関連痛は、医師が病気の原因となっている臓器を診断していく上で重要な指標となります。
いくら筋肉をもみほぐしても肩こりや痛みが取れないという方は、もしかすると、肝臓や胆のうなどの内臓に問題があるのかもしれません。