肝臓には、どんなイメージがあるでしょうか。
お酒の飲み過ぎは肝臓に悪いとか、あるいは「沈黙の臓器」と呼ばれているのをご存知かもしれません。
肝臓は栄養素の代謝や、解毒、ビタミンの貯蔵、ホルモン代謝など500以上の機能を果たし、
不平不満を言わず、健康な身体のためにいつも活動してくれています。
ガマン強い臓器、それが肝臓です。
今回は、そんな肝臓のことをご紹介していきます。
肝臓の場所を図で解説し、機能や働きを詳しくご紹介していきます。
まずは肝臓の場所を図で紹介!
肝臓の場所は、みぞおちの右側で肋骨に隠れるようにしてあります。
肝臓の場所を図でチェックしてみましょう。
肝臓は、1.0〜1.5㎏程度の重さがあり、人体最大の臓器です。
肝臓は肝細胞からなる肝小葉と呼ばれる六角形のユニットが集まって構成されています。
肝臓は横隔膜にぶら下がるように位置しています。
横隔膜の位置を解剖図で確認してみましょう。
この横隔膜にすっぽりと隠れるように肝臓が位置します。
肝臓は右と左に分かれており、それぞれ右葉と左葉と呼ばれます。
右葉が全体の65%を占め、左葉が35%を占めています。
こちらが肝臓単体の図です。ななめに線が入っているところで右葉と左葉が分かれます。
肝臓に血液を送り込む血管は2つあり、門脈と肝動脈と呼ばれます。
門脈が肝臓に入る血液の80%を供給しており、腸や胃、脾臓からの血液を集めています。
なぜこのようなシステムになっているかと言うと、腸などから吸収した食べ物の中には体に害となるものが含まれている場合もあるためです。
肝臓は解毒の機能がありますので、摂取した物の中に有害物があれば、肝臓によって無害化して静脈より心臓に送り出し、全身の細胞に供給するようになります。
人体最大の臓器、重たい肝臓がそこに位置するワケ
肝臓の場所についてもう少し詳しく見てみると、
肝臓の場所を固定しているのは、肝鎌状間膜と肝冠状間膜です。
このうち最も丈夫なのは肝鎌状間膜の中を通っている、肝円索です。
この肝鎌状間膜によって肝臓は、横隔膜に“ぶら下がる”ように位置しているのです。
ちなみに肝円索はお母さんのお腹のなかにいるときには臍静脈として働いていました。
生まれた後は臍静脈は必要なくなるので、肝円索として再利用されているのです。
ところで、なぜ肝臓は横隔膜に固定されているのでしょうか。
横隔膜は呼吸に関わる筋肉で、上下に動くことで、息を吐いたり、吸ったりできます。
それなのに重たい肝臓がくっついていたら呼吸の効率は悪くなってしまいます。
また、重心は重いところが下にあるほどバランスがとりやすくなりますが、1.5~3㎏もある肝臓を腹部の比較的高い位置に配置すると、バランスもとりにくくなります。
なぜ、人体はこのように“勝手の悪い”位置に肝臓を配置しているのかというと、それは血液を循環させるためです。
人間は四足歩行の動物と違って直立で生活しているので、腸で吸収した栄養を血液に乗せて「上にある」肝臓に届けなければなりません。
肝臓は下から見ると「おわん」のような形をしています。
こちらが肝臓を下から見た図です。
これ呼吸運動で横隔膜が上下するときに一緒に肝臓も上下すると、腸を圧迫したり、開放したりを繰り返すようになるのです。
この動きによりポンプ作用で、腸の血液が上に位置する肝臓まで、重力に逆らって送ることができるのです。
このように人の生き物としての知恵で肝臓の位置が決まっているのです。
肝臓の形について 肝臓が三角形なのはなぜ?
では、肝臓がこのようにすこしイビツな三角形になっているのは何故でしょうか。
これは肝臓の左隣りに「胃」があるからです。
胃はみなさんご存知の通り食べた物を消化するところで、食事後は一時的に胃に食べ物がたまります。
大きくなった胃のスペースを確保するために肝臓の左葉は右葉に比べて小さく、いびつな三角形のようになっているのです。
胃についてはこちらの記事もご参照ください。
ちなみに、肝臓の位置は食事の前後で多少変わります。
つまり、食事をして胃にたくさん食べ物が詰まっていると右側に移動して、胃のスペースをとり、かつ体のバランスが左右で崩れないように調節しています。
反対に、空腹で胃の中が空っぽのときは、左側により、左右の重量バランスが崩れないようになっているのです。
また健康診断で行われる血液検査の時に、肝臓の数値は重要視されます。
ここまでお伝えしてきたように、腸からの血液はまず肝臓を通りますし、腎臓を除く他の臓器からの静脈血も肝臓を経由して心臓に戻るので、肝臓の数値をチェックすれば全身に問題があるかどうかが即座に分かります。
こういった理由から肝臓の数値は重要視されるのです。
血液検査についてはもっと詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
まとめ
肝臓の場所を図でお見せし、そこに位置する理由についてお伝えしました。
人の体というのは良くできているもので、臓器の配置ひとつを考えてみても、実によく作られていることに驚きます。
裏を返せば人の体は繊細にできていますので、日ごろから身体のことに気を遣い、健康を保つ努力が必要ということです。
参考書籍 病知らずの体の仕組み 著:河野俊彦