お尻から腸がでるなんて聞くとすごく怖く感じますよね。
直腸脱は直腸がお尻から出てきてしまう病気です。
直腸瘤は肛門脱と混同されている方も多いのですが、全く別物です。
脱肛とは痔核(いぼ痔)が肛門から出てくるもので、直腸脱は字の通り直腸自体が肛門から出てくる病気です。
直腸脱になるのは、ほとんどが高齢の女性で、加齢に伴って直腸を支える組織が弱り、直腸脱を発症します。
出てきた直腸を手で戻しても、またすぐに出てきてしまうことが多いので、手術によって治療するケースが多いです。
今回は、直腸脱の症状、原因、治療について解説していきます。
おしりから腸が出る直腸脱の原因
内臓は重力に従って下に下がりやすい性質がありますが、内臓それぞれを定位置に保持するための機構が備わっています。
通常、直腸は肛門挙筋に支えられており、直腸が肛門から出てくることがないようになっています。
高齢女性に直腸脱が多いのは、加齢とともに肛門挙筋の筋肉が衰えて、腸を支えきれなくなっているためです。
特に、出産を繰り返してきた方は、肛門挙筋をはじめとした、骨盤底筋の筋力低下が起こりやすいと言われているため、出産を繰り返していることも原因の1つです。
その他にも直腸が短かったり、痔核(いぼ痔)が悪化することによって起こる肛門脱を放置することも、直腸脱の原因となります。
直腸脱は痛い?その症状について
直腸脱になると、初期は排便時にのみ直腸がお尻から出てくるようになります。
それが進行してくると、立って何もしないでいる時にも、直腸脱が起こるようになってきます。
手で押し込めば元には戻りますが、それも一時的なもので、またすぐに直腸脱が起こるようになります。
直腸脱の状態が続くと、下着と擦れるなどして、出血したり痛みが出るようになります。
ここで肛門脱と直腸脱の違いを簡単に説明しておきます。
脱肛の元は痔核、いわゆる「いぼ痔」です。
いぼ痔は静脈に血液がうっ血して出来上がったコブのようなものです。
これがだんだんひどくなると、肛門から飛び出てくるようになり、重症化すると、常時肛門から飛び出た状態になります。
この状態が肛門脱です。
一方で直腸脱は、骨盤底筋の筋力低下などにより、直腸そものもが肛門から落ち出てきたものです。
お尻から出てくるという点で同じですが、肛門脱はできものが飛び出てきた状態で、直腸脱は直腸が飛び出てきた状態で、全く違うものです。
混同されることが多いので、確認しておいてください。
直腸脱の治療
すでにお伝えした通り、直腸脱になると、出てきた直腸を元に戻しても、すぐにまた出てきてしまいます。
ですから治療するには手術が必要です。
手術の方法は2つあります。
1つは、直腸をおなか側から持ち上げるようにする手術です。
そもそも直腸脱は、肛門挙筋の機能低下によって起こるものなので、おなか側から持ち上げる方法は、その機能を代償するために適しています。
しかし、デメリットもあり、手術が大掛かりになり、全身麻酔が必要です。
直腸脱を起こすのは高齢の女性がほとんどです。
高齢女性に全身麻酔をかけるというのは、それなりにリスクを伴います。
もう1つの治療は、肛門を糸で縫って直腸が落ちてこないようにする方法です。
肛門を縫うと言っても、便が出てくるように輪を作って縫います。
この手術法であれば、局所麻酔での手術が可能で、入院も短期で済みます。
ただし手術後に、激しい運動を避けたり、便秘にならないように注意しなければなりません。
直腸脱は放っておくと、出血や痛み、細菌感染なども起こしかねない病気です。
お伝えした通り、治療には手術が必要ですので、専門医を受診して治療の相談をしましょう。
受診する科は肛門科や消化器外科などが適しています。
直腸脱の手術費用は?
直腸脱が重症化すると手術によっての治療が必要になることもあります。
直腸脱の手術を行った場合、平均して10日程度の入院が必要と言われています。
直腸脱の手術費用ですが、入院中の処置によって違いがあるため、個人差があるとしか言えません。
ただし、医療保険が適応されるため自己負担額は多くとも3割までです。
さらに日本には高額療養費制度というものがあります。
治療にかかる費用が一定額を超えると、その分を保険で負担してもらうことができるのです。
病気の時には保険は心強いですね。
なお、1人部屋などの個室を利用するときには、差額ベッド代といって保険の適応されない費用が発生します。
ですから入院費用をなるべく抑えたい方は、大部屋を希望した方が良いでしょう。
まとめ
お尻から腸が出てくる直腸脱について解説しました。
お尻のこととなると、恥ずかしさも伴って見て見ぬ振りをしがちです。
しかし直腸脱を放っておいて、勝手に改善するということはまずありません。
専門医のもとでしっかり治療しましょう。
また、女性で出産経験のある方は、将来直腸脱にならないように、若いうちから骨盤底筋体操を行っておくと予防になるでしょう。