今回は、結腸の最終コーナーであるS状結腸について解説していきます。
S字結腸【エスじけっちょう】と呼ばれることもありますが、多くの解剖学の教科書にはS状結腸【エスじょうけっちょう】と記されています。
この些細な違いを、あまり気にする必要はありません。
示しているものは同じで、結腸の終わりに位置し、直腸につながる部位がS字結腸、もしくはS状結腸です。
今回は多くの解剖学書に合わせて、S状結腸に名前を統一してお伝えしていきます。
S状結腸は排泄される便が一時的に溜められる場所です。
S状結腸に溜まった便は、一定量に達すると直腸に流れ込みます。
そして、便が直腸に到達すると便意をもよおし、排泄という流れになります。
S状結腸に多い病気といえば、癌が有名です。
前述の通り、S状結腸は便が溜められる部位ですが、慢性的な便秘症の人にS状結腸の癌が多いことから、便秘症と癌の関連性が疑われていますが、未だ研究の途上で、はっきりとした関連性はわかっていません。
今回は、S状結腸の場所や機能、役割について解剖図を用いて、わかりやすく解説していきます。
S状結腸の場所を図でチェック!
ではさっそく、S状結腸の位置を解剖図でチェックしてみましょう。
S状結腸は大腸の一部です。下図で黄色く示しているところがS状結腸です。
大腸だけが見えるように骨格を除いて、横からS状結腸を見てみましょう。
S状結腸が直腸に向かって、後ろに伸びているのがお分かりいただけると思います。
S状結腸は約15cmほどの長さがあり、直腸に向かってS字のようにカーブを描いていることからこの名前が付けられています。
大腸のその他の部位の名前は以下の通りです。
もし、下行結腸から直腸までが一直線になっていたら、便は重力にしたがって、すぐに直腸まで到達し、排便のタイミングをコントロールするには肛門括約筋に頼るしか無くなってしまいます。
つまり、常にお尻の穴を締めるように意識しておかないと、便が漏れてしまうということです。
このような事態を防ぐために、S状結腸は下行結腸から横方向に曲がり、便が勝手に直腸にまで流れていかないような構造となっているのです。
S状結腸はお腹の中で固定されています。
S状結腸を固定しているのが、S状結腸間膜【エスじょうけっちょうかんまく】です。
お腹の中にある消化管の大部分は、腸間膜という膜によって吊り下げられるような構造になっています。
この腸間膜に固定されることによって、お腹の中でねじれたり、他の臓器と絡まったりすることを防いでいるのです。
S状結腸の体表からの位置はどこか?
続いて、S状結腸を体表から見るとどこに位置するのか、その場所を確認しておきましょう。
左の腰骨の内側のあたりにあります。下図で、赤丸で示した部位です。
前述の通り、S状結腸は便が溜められる部位です。
そのため、痩せ型の方で、便秘症がひどい時には、この辺りがぽこっと浮き出ていることもあります。
S状結腸をはじめ、腸は筋肉でできています。
便秘で硬くなった腸は、肩や腰の筋肉と同様にコリができています。
そのため、腸もみで血流をよくすることで腸の機能を改善し、便秘解消につながることがあります。
腸もみのやり方については、こちらの記事をご参照ください。
S状結腸の機能と役割 S状結腸がここに位置するのには訳がある!
繰り返しになりますが、S状結腸は便を溜めておく器官です。
ではなぜ、人は体にとって老廃物でしかない便を、体の中に溜めておく機能を持っているのでしょうか。
人類が狩りをして生活をしていた時にさかのぼって考えてみましょう。
便を溜められるということは、排泄のタイミングをコントロールできるということです。
草原でライオンに襲われそうになってる時に、ちょっとタイムと言って排泄をしていたのでは、襲われて、食べられてしまいます。
安全な環境で落ち着いて排便できるように、便を溜める機能が備わっているのです。
生き残る術として培われてきた排便のコントロール機能は、現代での生活においても役立っています。
文明を作り出した人は、社会生活を営むようになりました。
大勢の人がいる社会においては、「マナー」が大切になります。
例えば、人前でゲップをしない、おならをしない、うんちを漏らさないなどなどです。
所構わずうんちを漏らすようでは、その人は信用されないでしょう。
このように人間にとって、排泄のタイミングコントロールするというのは重要な機能です。
その役割を担っているのが、S状結腸なのです。
まとめ
S状結腸の場所を解剖図で解説し、その機能や役割についてもお伝えしてきました。
解剖図で見ることで、S状結腸がどこに位置して、どのような形をしているのか、また周りにどのような臓器があるのかということが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
S状結腸は地味な臓器ですが、社会生活を営み、排泄のタイミングをコントロールしなければならない人間にとって、重要な臓器です。
たまには腸もみをしてあげて、S状結腸を労わってあげましょう。