お腹にはさまざまな臓器があり、どの臓器に異常が起こっても痛みを生じる可能性があります。
右上腹部にある臓器に異常が起これば、やはり右上腹部の痛みとして感じられやすいです。
では、右上腹部にはどのような臓器があるのでしょうか。
代表的なものとして、肝臓や胆嚢、右の腎臓などがあります。
肝臓は解毒、代謝、栄養素の貯蔵など重要な機能を持ち、すべて合わせると500以上もの機能があるとも言われています。
胆嚢は胆汁をためておく器官で、消化吸収に重要な働きがあります。
腎臓は尿を生成し、体から不要物を排泄するための器官です。
これらの臓器はどれも重要な器官であり、異常が出ている場合は治療しなければなりません。
そして、右上腹部の痛みの原因を考えるためには、
- 右上腹部のどこが痛むか
- いつから痛みが出て、どのくらいの時間痛いか
- どんなときに痛むか
- 痛みの種類がどのようなものか(シクシク、ズキズキ、キリキリなど)
- 痛みにともなう症状があるか(発熱、嘔吐、下痢など)
参考)図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book)
以上のことを確認しておくと、原因を特定しやすいです。
今回は右上腹部に痛みが起こったときに、原因として考えられる臓器とその病気について解説していきます。
もくじ
右上腹部がチクチク痛む原因とは?
まずは右上腹部とはどのあたりのことを言うのか、図で確認しておきましょう。
上図で赤丸で囲んだ周辺が、右上腹部です。
ではここにどんな臓器があるのかということも図で確認しておきましょう。
こちらの解剖図でいうと①の部位が右上腹部です。
ここには図の通り、肝臓、胆嚢、背中側にあるので図では確認できませんが、腎臓の一部があります。
すなわち、これらの臓器に問題が起こると右上腹部に痛みを生じやすいのです。
これより肝臓、胆嚢、腎臓に起こる代表的な病気について解説していきます。
右上腹部に痛みを起こす肝臓の病気
肝臓が原因となって、右上腹部に痛みが出る場合、肝臓が肥大して周囲の組織を圧迫していると考えられます。
この状態を肝臓腫大【かんぞうしゅだい】と呼びます。
肝臓腫大を引き起こす代表的な病気は、以下の通りです。
急性肝炎
急性肝炎の原因として多いのは、A,B,C,D.E型肝炎ウイルスによって起こるものが多いです。
肝細胞がウイルスによって炎症を起こし、右上腹部の痛み、全身のだるさや発熱、黄疸などの症状がでます。
ウイルスによって起こるもの以外に、自己免疫性肝炎、薬物性肝障害、アルコール性肝障害などがあります。
肝膿瘍【かんのうよう】
なんらかの原因によって、肝臓に細菌、真菌、原虫などが感染を起こすことで、肝臓に膿がたまる病気です。
感染の原因としては、胆石や胆嚢炎から起こるものが最も多いですが、その他、動脈や静脈などの血管を通して感染が及ぶこともあります。
心不全
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して、必要な血液量を送り出すことができなくなる状態のことを言います。
肝臓から心臓へ血液が流れるようになっているので、心不全が起こると肝臓に血液が留まり肝臓腫大が起こってしまいます。
右上腹部に痛みを起こす胆嚢の病気
胆嚢の病気として代表的なものには、胆石、胆嚢炎、胆嚢癌などがあります。
胆石
胆石とは、胆道にできる石のことです。
胆道とは肝臓から、大十二指腸乳頭までの胆汁が流れる経路のことを言います。図で確認しておきましょう。
石ができる場所により胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分けられますが、このうち胆内結石の割合が最も多く、70%を占めます。
脂質の多い食事の後や夜間に右上腹部の痛みが出やすいです。
胆嚢炎
胆嚢炎は胆嚢結石が原因となることが多いです。
石によって胆汁の流れが滞り、腸内細菌などが原因となり炎症を起こします。
胆嚢炎による右上腹部の痛みも、胆石と同様に食後に起こりやすいです。
胆嚢癌
胆嚢癌は初期には症状があまり出ません。
そのため発見された時にはすでに進行しているケースも多いです。
右上腹部の痛み以外に吐き気・嘔吐、黄疸、食欲不振、体重減少などの症状が現れます。
右上腹部に痛みを起こす腎臓の病気
右上腹部に痛みを引き起こす腎臓の病気は、尿管結石、腎盂腎炎などが代表的です。
尿管結石
腎臓や尿管などに石ができる病気です。
石があると尿の排泄が滞り、腎臓に圧がかかり痛みがでます。
石の詰まる場所によって、痛みが出るところも変わってきます。
腎臓は左右に1つずつあるので、右側に痛みが出る時は、右の腎臓が原因になっていると考えられます。
また、腎臓は背中側にある臓器なので、腹部より背中側に痛みを感じることもあります。
腎盂腎炎
腎盂腎炎の多くは腸内細菌などが、尿道を介して膀胱、腎臓に感染し炎症を引き起こす病気です。
腹痛や背中の痛みの他に、発熱や血尿などの症状が出ることもあります。
尿管結石と同様に右側に痛みが出る時は、右の腎臓で感染が起こっていると考えられます。
右上腹部の痛み ストレスが原因!?
右上腹部の痛みにはストレスが関係している場合もあります。
緊張するとお腹が痛くなるということを経験されたことはないでしょうか。
お腹にある腸と脳は密接に関係しており、ストレスがかかって脳の負担となると、それが腸の症状として現れることがあります。
反対に腸の調子が悪いと、脳はそれをストレスに感じ不快感を生じます。
このような腸と脳の関係を「腸脳相関【ちょうのうそうかん】」と呼びます。
ですから、肉体的にも精神的にもストレスのためすぎは、お腹の痛みとなって現れやすいのです。
ストレスのためすぎには注意しましょう。
ガスがたまっても右上腹部が痛くなる
腸内のガスは大腸の折れ曲がったところに溜まりやすいです。
部屋の中のホコリなどが隅っこに溜まりやすいのと同じような原理です。
大腸の構造を解剖図で確認してみましょう。
大腸はこのように位置しているので、右上腹部の赤丸をつけているところにガスが溜まりやすいです。
ガスがたまると周囲の組織を圧迫して、右上腹部の痛みとして感じられます。
お腹を圧迫するような服装や、食べ物をよく噛まずに食べる習慣があるとガスが溜まりやすく、症状が出やすいので気をつけましょう。
右上腹部の痛みに下痢を伴うとき
右上腹部の痛みとともに下痢が起こっている場合、大腸に病気があるかもしれません。
近年増加している過敏性腸症候群は、排便すると症状が軽減する、発症時に排便回数が変化する、発症時に便の外観の変化があるなどの特徴があり、腹痛を伴うことも多いです。
腸脳相関については上記した通りですが、過敏性腸症候群もストレスが原因の1つと言われています。
このほかに大腸の病気として、難病に指定されている潰瘍性大腸炎、クローン病、そして大腸癌などがあります。
腸から始まる病気は多いです。
そのため下痢便が長く続く場合は、なんらかの病気の可能性もあるため、早めに専門医を受診されることをお勧めします。
押すと痛いときから、違和感程度まで痛む強さはさまざま
右上腹部の痛みと一口に言っても、その症状の出方はさまざまです。
急性腹症など重篤な疾患の場合は、お腹を押さえた時に強い痛みを伴うこともあります。
反対に違和感程度の痛みしかない場合もありますが、痛みが軽いからといって油断は禁物です。
冒頭でもお伝えした通り、腹部には多くの臓器があるため、軽い腹痛でも治療すべき病気が潜んでいる可能性があります。
病院にかかる時に注意しておくべきことは、どこが、いつから、どんな時に、どのように痛いかを医師に伝えられるようにしておくことです。
加えて、痛みとともに出てきている症状について伝えると医師も正確な診断を下しやすくなるので、覚えておきましょう。
まとめ
右上腹部の痛みの原因について解説してきました。
今回は、内臓が原因となる痛みについて解説しましたが、この他に筋肉や骨・関節が痛みの原因となることもあります。
いずれにしても痛みは、体からの警告です。
内臓や筋骨格系、あるいは精神面に異常をきたしているため、痛みが出てくるのです。
軽い痛みでも油断せず、痛みが続く場合は専門医を受診するようにしましょう。