骨盤という言葉は、テレビや雑誌などで、よく出てきます。
そして、決まってゆがみを取りましょう、という話になっていることが多いように感じます。
骨盤には関節があるので、左右で差が出る、つまり”ゆがむ”ということは起こりうるでしょう。
「ゆがむ」と聞くと「治さないといけない」と考える人が出てくることも当然です。
しかし、左右差がなく、ゆがみのない人など本来いません。
つまり、ゆがみがあるということはいわば「当たり前」のことです。
そのため、病的に骨盤に異常をきたしている場合を除いては、骨盤はゆがみを無理に矯正する必要はないということです。
ですが、まずは正常の骨盤の状態というのは、知っておいた方が良いでしょう。
なぜなら、正常な状態を知らなければ、何が異常なのかということが、わからないからです。
骨盤は、腸を始めとする内臓を守り、下から支えてくれている大切な骨です。
その重要な骨の異常を察知できることは、健康な体を保つ上で非常に重要です。
そこで今回は、骨盤の位置がどこにあって、どのような構造になっているのか、ということを図を用いて詳しく解説していきます。
骨盤、骨盤、とよく聞くけど、詳しくはわからないという方は、ぜひこの記事を参考にして詳しくなってください。
骨盤の位置を図でチェック!
まずは、骨盤を解剖図で観察してみましょう。
こちらが骨盤です。
骨盤は、いくつかの骨が合わさってできています。
まずは、左右一対の寛骨【かんこつ】です。
寛骨についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
参照)寛骨の位置を図で解説!
この寛骨は、腸骨【ちょうこつ】、坐骨【ざこつ】、恥骨【ちこつ】によって構成されています。
続いて、下の図をごらんください。
赤色のところが腸骨、黄色のところが坐骨、青色のところが恥骨です。
左右の寛骨に挟まれるようにしてあるのが、仙骨【せんこつ】と、その先端のにある尾骨【びこつ】です。
赤丸で囲んだところが仙骨です。
仙骨と寛骨でなす関節のことを仙腸関節と呼びます。
続いて、同じ赤丸で囲んだところが尾骨です。
「尾骨」のことを「尾てい骨」ということもあります。
これらの骨が組み合わされて、骨盤は形作られています。
骨盤の形は男女で違う!
実は、骨盤の形状は男女で異なります。
こちらの2つの骨盤をご覧ください。
こちらの図は、男女の骨盤の形の違いを表したものです。
この骨盤の形の違いには、もちろん理由があります。
男性にはできなく、女性にしかできない仕事が、その答えになります。
それは、出産です。
女性の骨盤は、胎児を育てることができるように、幅が広く作られています。
また、出産のときに赤ちゃんがスムーズに出てこれるように、産道となる左右の寛骨でつくられる空間が大きくなっています。
骨盤の役割とは 骨盤は何のためにある?
ここまで、骨盤がどこにあって、どのような形をしているのかということが、お分かりいただけたと思います。
では、この骨盤は何のために存在しているのでしょうか。
このように大きな骨が、体の中央にあっては、重くて動きづらそうな気もします。
もちろん、骨盤がそこに存在するのには、重要な理由があります。
骨盤の機能は主に4つに分けられます。
- 内臓を守る
- 内臓を支える
- 筋肉の付着場所
- 座る時の土台
ひとつずつ解説していきます。
内臓を守る
もう一度、骨盤の形を見てみましょう。
骨盤は、このように筒状の形です。
これは、その内側に内臓を収めるためです。
骨盤周囲の内臓といえば、腸です。
骨盤と腸を合わせた解剖図を、確認してみましょう。
このように骨盤のすぐ内側に、腸が位置しています。
腸を始めとする内臓は、この大きな骨盤によって、外側から守られ活動をしています。
内臓を支える
2つ目の機能は、内臓を支えることです。
お腹の中には、内臓がびっしりと詰まっており、その重さはかなりのものになります。
人体で一番重い肝臓は、それだけでも1.5㎏ほどあります。
その他の内臓を合わせると、かなりの重さになります。
それを支えるのが、骨盤の役割です。
直立2足歩行となった人間は、骨盤の支えなしには、内臓を保持できません。
内臓を正しい位置に保持することによって、内臓本来の機能を発揮しやすいようにしているのです。
筋肉の付着場所
骨盤には、様々な筋肉が付着しています。
骨盤に付着する代表的な筋肉を、解剖図で観察してみましょう。
まずは腹直筋です。腹筋の中で最も表層にある筋肉です。ボディビルダーのような筋骨隆々な人の腹筋が割れているのは、腹直筋の形が浮き出たものです。
このほかにも人間な基本的な動作である、立つ、歩くなどに使われる腸骨筋です。
載せだすときりがなくなってしまうのですが、これら以外にもたくさんの筋肉が骨盤に付着しています。
このように、上半身からは腹筋などが、下半身には、足に伸びる筋肉が数多くついています。
骨盤は上半身の動きを下半身に伝える働きや、反対に下半身の働きを上半身に伝える働きがあります。
人が滑らかに動こうとする時に、骨盤によって上半身、下半身それぞれの動きが、他の部位とうまく協調することができるようになるのです。
座る時の土台となる
人は立っているばかりでなく、座って活動することも多いです。
特にデスクワークをしている人は、1日のほとんどの時間を座って過ごすという人も多いでしょう。
骨盤は、座っている時の安定に大きく関わっています。
背骨一本だけではどう考えても安定しませんが
そこに骨盤がつくと、安定しそうですよね。
骨盤が横に幅広くなっているのも、座った時の安定感を出すのに一役買っているのです。
骨盤の中でも主に座面と接触するのは、坐骨です。
赤丸で囲んだところが坐骨です。
坐骨の2点で支えるとともに、坐骨を大臀筋で覆い、いわば筋肉のクッションを作り出し、安定した座位姿勢がとれるようになっています。
まとめ
骨盤の位置を解剖図を用いて解説し、その形や役割、機能についてもお伝えしてきました。
骨盤は、私たちが立って、歩き、そして座っている時にも欠かすことのできない骨です。
また、内臓を守っている臓器でもあります。
そのため、骨盤骨折を起こすと、内臓が損傷しやすく、命にかかわる状態になることもあります。
自分の中の未知なる宇宙である、体のことを知るのは面白いですね。