恥骨は、骨盤の一部です。
骨盤は1つの骨のように見えるかもしれませんが、細かく分けると8つのパーツに分解できます。
骨盤の中央には仙骨、尾骨が位置し、その両脇に恥骨、腸骨、坐骨という3つの骨が左右1対ずつ組み合わさっています。
その中でも恥骨は、左右の骨盤を前面でつなぐ役割を果たしている骨です。
その左右の骨盤をつないでいるところを恥骨結合と言います。
恥骨結合は細菌感染による炎症がおきやすく、恥骨自体も転倒などの衝撃に伴って骨折を起こしやすいところです。
これらのことが主な原因となり、恥骨の痛みが発生します。
今回は、恥骨の位置や構造を解剖図を用いてお伝えし、恥骨痛がおきる原因について解説していきます。
もくじ
恥骨とはどこか?図で恥骨の位置を解説!恥骨結合の構造について
まずは骨盤の位置を図で見てみましょう。
骨盤だけをアップしてみます。
恥骨は下図で、青色のところです。
実は、骨盤の形状は男女で違いがあります。
上図において向かって左は男性の骨盤です。向かって右は女性の骨盤です。
男女でかなり形状が異なることが、お分かりいただけるのではないでしょうか。
女性はお腹で胎児を育てることができるように、骨盤が広く作られています。
骨盤については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
参照)骨盤について解説!
骨盤を後ろから見るとこのように見えます。
ちなみに恥骨、腸骨、坐骨を組み合わせた骨のことを寛骨【かんこつ】と言います。
寛骨外側のくぼみのことを寛骨臼【かんこつきゅう】と呼びます。
こちらが寛骨臼です。
寛骨臼には、大腿骨がはまり込み、股関節を形成します。
寛骨については、こちらの記事で詳しく解説しています。
恥骨の図 恥骨結合の構造について
続いて、左右の恥骨が合わさる恥骨結合についてです。
左右の恥骨の間にある赤丸のところが恥骨結合です。
恥骨結合は繊維軟骨結合【せんいなんこつけつごう】です。繊維軟骨とは大部分がコラーゲンでできたもののことを言い、圧力に抵抗し、衝撃を吸収するため、骨同士が接触することによる損傷を防いでいます。
恥骨結合は、ほとんど動くことのない結合ですが、女性の場合は、妊娠中から出産に伴って結合がゆるんで、わずかに動くことが知られています。
恥骨結合の上側は上恥骨靭帯が付着しており、下側には恥骨弓靭帯が付着して、それぞれ恥骨結合を補強しています。
恥骨結合の上外方にある恥骨結節【ちこつけっせつ】(結節とは骨の出っ張りのこと)は鼠径靭帯【そけいじんたい】の付着部となっています。
恥骨結節は下図で、矢印のところです。
恥骨の痛みの原因となる病気
恥骨は細菌感染による炎症が起こりやすく、転倒による衝撃などで骨折が起こりやすい場所でもあります。
転倒や事故など強い衝撃が加わった後に、恥骨周囲の痛みだした場合は恥骨骨折を疑いますが、そうでなければ恥骨骨炎の可能性があります。
恥骨がチクチク痛む病気 恥骨骨炎
恥骨骨炎は、次の通り恥骨に起こる炎症のことです。
鼠径部や膀胱、前立腺の手術後に感染症を起こすことで、発症するケースが最も多いです。
20〜40歳代の若年女性に多いのが特徴です。
恥骨骨炎では、恥骨結合を圧迫すると痛みが出て、その痛みは、太ももの内側にまでチクチクと響くことがあります。
痛みは骨盤の前面にまで及ぶことがあり、歩行障害を伴うこともあります。
この歩行障害が起こると厄介で、異常な歩行を続けていると、本来使用されるべきでない部位が使われ、炎症を起こして痛みが強くなり、根本原因である恥骨骨炎の診断がつきににくくなってしまいます。
治療には痛み止めを使いながら、患部が熱を持っていれば冷やし、そうでなければ温めるなどして、対処療法を行いながら、炎症が治まるのを待ちます。
恥骨骨炎は正しく治療しないと、悪化する恐れがありますので、必ず専門医の診察を受けて治療してもらうようにしましょう。
恥骨が痛くなる病気・怪我 恥骨骨折
若年層では、ちょっと転んだくらいで恥骨骨折が起こることは稀です。
しかし、骨粗しょう症のある高齢者が転倒すると、恥骨骨折が起きる可能性は若年層の何倍にもなります。
恥骨骨折による痛みは、骨折の程度により異なりますが、歩けないほどの痛みが出ることもあります。
また荷重をかけて歩行ができるようになるまで、数日から長ければ数週間、ベッド上生活を余儀なくされることもあります。
高齢者が数日でもベッド上生活を送ると、それだけで筋力低下が起き、歩行に支障をきたすこともあります。
骨折部のズレがない恥骨骨折では、手術を行わず自然に骨がつく保存療法が選択されることが多いです。
恥骨の痛み 臨月
恥骨の痛みは妊娠後期の臨月を迎える頃から出産後にも起こります。
妊娠に伴う恥骨の痛みは、出産に向けて、産道を開くために恥骨結合が開くことが原因となります。
胎児が大きくなるほどに恥骨の痛みは、ひどくなり臨月の頃に痛みが一番ひどくなると言われています。
この恥骨結合が開いていく現象は、正常なことなので、骨盤が開くのを止めることはできません。
しかし痛みがひどい場合は、産婦人科医に相談してみましょう。
産後もこの恥骨結合が開いたままでいる場合は、痛みを感じることがあります。
妊娠中は開いてくる骨盤に強い刺激を加えることはできませんが、産後は下図のように骨盤を閉じる方向に力を加えることができます。
骨盤を閉じる方向に力を加えることで、恥骨結合も閉じ、痛みも緩和しやすくなります。
骨盤、恥骨結合を閉じるには、トコちゃんベルトが効果的です。
トコちゃんベルトの効果は?いつから付ける?寝るときにはどうする?
トコちゃんベルトを付けると、恥骨結合を閉じる方向に力が加わるので、痛みが和らぐとされています。
トコちゃんベルトの効果ですが、HPによると医学的な検証が進められているとのことで、現在研究の途中なのでしょう。
しかし、Amazonなどの口コミを見る限りは、評価が高く効果的であったとの意見が多いようです。
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トコちゃんベルトをいつからつけるべきかについてですが、妊娠中から使用可能です。
就寝中は邪魔になるようであれば外しても構わないようですが、医師から安静の指示が出ていたり、ベルトなしでは動けない場合にはつけておくことが望ましいようです。
まとめ
恥骨の位置と、恥骨の痛みの原因について解説してきました。
骨盤は体の土台となる骨です。
その骨盤の中でも中央に位置するのが、恥骨結合です。
恥骨結合は相対的に、血流量が乏しいため、細菌感染を起こしやすく炎症も起こりやすいです。
また、左右の寛骨をつなぐ恥骨結合には、構造上のストレスがかかりやすく、転倒や事故などによって骨盤に強い衝撃が加わると骨折しやすい部位でもあります。
特に、高齢者が骨折した場合は、受傷後にベッド臥床している間に、筋力が落ちて歩行が不安定になったり、認知機能が低下し認知症を発症する危険性が高くなるので、注意が必要です。