胆嚢という臓器をご存知ですか。胆嚢と書いて、「たんのう」と読みます。
胆嚢は肝臓の下にある袋状の臓器です。
胆嚢の機能は、肝臓で産生された胆汁を濃縮して、貯めておくことや、必要に応じて放出することです。
胆汁が放出されるところは大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)で、これは十二指腸の一部です。
ざっと胆嚢について説明するとこのような感じですが、文字で説明されても分かりくいのではないでしょうか。
そこで今回は、胆嚢の場所を図で解説し、その働きや機能、病気について分かりやすく解説していこうと思います。
胆嚢の場所
胆嚢の働きや胆嚢で起こる病気を理解するためには、まずは胆嚢がどこにあるのか、その位置を理解しておく必要があります。
そこでまずは、胆嚢の場所について解説します。
胆嚢は肝臓の下に隠れるように位置しています。
図で確認してみましょう。
肝臓の下にちょこっと出ている緑色のものが胆嚢です。
このままでは見えにくいので、肝臓、胆嚢を下から見た図でも確認しておきましょう。
続いて、胆嚢のみの図です。
胆嚢と肝臓は胆道【たんどう】と呼ばれる管を通してつながっています。
胆道についても図で確認してみましょう。
胆道とは、肝臓から十二指腸乳頭【だいじゅうにしちょうにゅうとう】までの胆汁が通る道の総称です。
ですから、胆道は部位ごとに分けられ、それぞれに名前が付いています。
胆道は大きく分けると肝内胆管と肝外胆管に分けられます。
肝外胆管はさらに、肝門部胆管、総肝管、総胆管に分けられます。
胆管の出口で、胆汁が分泌される大十二指腸乳頭にはOddi括約筋(オッディ括約筋)があり、弛緩(緩むこと)や収縮を行い、胆汁の分泌量を調整しています。
胆嚢の組織は、外側から漿膜、漿膜下層、固有筋層、粘膜層で構成されています。
胆嚢は癌が発生しやすい部位です。他の消化管と異なり、胆嚢には粘膜下層や粘膜筋板がないため漿膜にまで癌が進行して、癌細胞転移や浸潤が起こってしまいやすいです。
胆嚢の位置と痛みかた
胆嚢の位置を全身解剖図で確認してみましょう。
胆嚢は小さくて見えづらいのですね。肝臓の下に隠れるようにあります。
胆嚢は右側の上腹部に位置しています。
胆嚢に胆石や癌などの病気が生じ痛みを伴うとき、この右上腹部が痛むことが多いです。
右上腹部を体表から確認すると、下図で①の位置になります。
胆嚢の痛みかたは、胆石があるときに特徴的です。
後ほど詳しく解説しますが、胆嚢に蓄えられる胆汁は脂肪を乳化(脂肪を吸収しやす状態にする)する作用があります。
ですから、お肉など脂肪分の多い食事をとると胆汁が多く分泌され脂肪を吸収できる状態に変化させます。
すると胆石ができている場合、胆汁の分泌とともに結石が動くことで、痛みを生じるようになります。
これは高脂肪の食事後、20〜30分後から2時間ほどで、右上腹部の痛みとして感じられます。
また、痛む場所も右上腹部だけとは限りません。
関連痛と呼ばれる痛みの種類があります。これは、実際に問題のある部位とは別の部位に痛みが生じる状態のことで、痛みの神経回路が混線を起こすことで生じます。
胆嚢の関連痛は右肩周辺に感じられます。
ですから、右上腹部に痛みがないからといって胆嚢に問題がないとは言えません。
関連痛の出かたには個人差があるため、右肩以外の場所に痛みが及ぶこともあるので注意が必要です。
胆嚢の働き
上記した通り、胆嚢の働きは胆汁を濃縮して貯め、必要に応じて放出することです。
では、胆嚢から放出される胆汁にはどのような機能があるのでしょうか。
胆汁は、十二指腸から始まる小腸で脂肪を吸収するために、脂肪を乳化(にゅうか)させる働きがあります。
乳化とは、またの名を「ミセル形成」ともいい、脂肪を人の体に取り込むために欠かせない作用です。
この機能が失われると、3大栄養素の1つである脂肪をうまく吸収することができなくなります。
脂肪は細胞膜を形成したり、体のエネルギーとなる栄養素ですから、脂肪が不足すると健康が損なわれてしまいます。
胆汁の機能はもう1つあります。
それは肝臓の老廃物を排泄することです。
実は胆汁は肝臓の老廃物でできているのです。
脂肪を吸収するのに不可欠なものが、老廃物でできているというのは驚きですよね。
人体にとって不要なものをうまく利用し、排泄と吸収を行っているのです。
ちなみに、胆汁の中で不要なものはそのまま便と一緒に排泄され、必要なものは回腸から吸収され再利用されるという仕組みになっています。
人の体はうまくできていますね。
胆嚢の病気
胆嚢の病気として代表的なものは、胆石症、胆嚢炎、胆嚢ポリープ、胆道癌などがあります。
以下にご紹介していきます。
胆石症
胆石症は、ここまでお伝えしてきた胆汁の流れ道に結石ができることです。
胆嚢の中に結石ができる胆嚢胆石が最も多く、全体の80%程度を占めます。
その次に多いのが、胆管胆石で全体の20%弱、肝内胆石はわずかで全体の1〜2%程度です。
胆石はその成分から、コレステロール胆石と色素胆石に分けられますが、食の欧米化に伴いコレステロール胆石が増えてきています。
胆石は状態によっては、手術によって取り除かれることもあります。
胆嚢炎
胆嚢炎の多くは、胆石が胆道を塞いでしまうことで発症します。
右上腹部の痛みとともに吐き気、嘔吐、発熱などの症状を伴うこともあります。
これらの症状は1週間程度で治ることが多いですが、上記した通り、胆石は手術が必要な場合もあるため、病院で検査を受けた方が良いでしょう。
胆嚢ポリープ
胆嚢ポリープ自体は無症状なこともありますが、できる場所によっては胆嚢炎を引き起こすこともあります。
1cmを超える胆嚢ポリープは癌の可能性もあるため、ポリープが発見された場合は定期的な検査が必要です。
胆道癌
胆道癌とは、胆汁の通り道である胆道や胆嚢にできる癌のことで、胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌に分類されます。
胆道癌は、切除が可能なものであれば、手術によって取り除かれることが多いです。
よく言われれることですが、癌は早期発見、早期治療が重要です。
健康診断などで定期的にチェックするようにしましょう。
まとめ
胆嚢の場所を図で提示し、その働きや病気について解説してきました。
胆嚢についてお分かりいただけましたでしょうか。
胆嚢は病気があると取り除かれてしまうことがあります。取り除かれても、体がその状態に適応するため、少し経てば日常生活に支障のない状態にはなります。
しかし、重要な臓器であることには変わりありません。
ですから、しっかり働いてもうに越したことはありません。
胆嚢に病気を起こさないためには、まずは食生活を改めることです。
脂肪分の多い食事ばかり摂っていると、胆嚢への負担が増してしまいます。
食生活を改め、胆嚢を気にかけた生活を送るようにしましょう。