「お腹が痛いけど、腸の病気?」
「それとも、ほかの内臓が悪いの?」
当記事をご覧の方は、このような不安を抱えられているのではないでしょうか。
お腹の痛みは、人によってさまざまな表現をされます。
ストレートに「お腹が痛い」という方もいれば、「腸が痛い」あるいは、「胃が痛い」と言われる方もいます。
実際、お腹の痛みは、腸の病気や不調が原因になっていることもあれば、そのほかの内臓が原因になっていることもあります。
痛みの原因がちょっとした不調からくるものもあれば、なかには重大な病気が原因となっていることもあるので、注意が必要です。
お腹の痛みは、痛みが出ている場所によって原因になっている内臓が、ある程度わかります。
また、
痛みの原因を考えるときに、
- どこが痛むか
- いつから痛みが出て、どのくらいの時間痛いか
- どんなときに痛むか
- 痛みの種類がどのようなものか(シクシク、ズキズキ、キリキリなど)
- 痛みにともなう症状があるか(発熱、嘔吐、下痢など)
参考)図解入門よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book)
以上のことを確認しておくと、より原因の特定に役立ちます。
病院を受診するときには、メモに書いておいて、医師に伝えるようにしましょう。
そこで今回は、お腹の部位別の痛みの原因が、どの内臓によって発生するものか、解剖学の視点から解説していきます。
腸の問題によってお腹が痛いのか、そのほかの内臓の問題でお腹が痛いのか、それぞれの部位別にお伝えします。
※本記事に書かれている内容は参考程度にして、気になる症状がある方は、病院を受診して、検査してもらいましょう。
もくじ
お腹の痛みを確認する前に、全身状態をチェック!
お腹や腸の痛みをチェックする前に、全身の状態をみておく必要があります。
お腹や腸の痛みには、重大な病気が原因になっていることがあります。
その場合には、発熱や嘔気、嘔吐、下血、便秘、下痢などの症状も、一緒に出ているかもしれません。
お腹や腸の痛みと一緒に出てきている症状は、病気を特定するうえで重要な情報となります。
もし、病院にかかる場合には、痛み以外の症状についても、医師に伝えるようにしましょう。
下痢、腹痛とともに発熱、嘔吐がある場合は、何らかの感染症にかかっていることが考えられます。
脱水に注意して水分補給をしながら、専門医の診察を受けて下さい。
また、便秘、腹痛とともに腹部の張りがある場合は、腸閉塞や腸の狭窄【きょうさく】などが腸の病気の可能性があります。
この場合も専門医の診察が必要です。
お腹の痛みをチェックする方法
お腹や腸の痛みのチェック方法をお伝えしていきます。
①仰向けに寝て、膝を立てます。
膝を立てることでお腹周りの緊張がゆるみ痛みのチェックがしやすくなります。
②お腹を押さえるために下図のように指先をそろえます。
③人差し指から薬指で張りや痛みのある周辺を押さえます。
全体が張ったような状態で、軽く叩くと響くような音が出る場合は、ガスがたまっている可能性がりあります。
全体が揺れるように動くときは、脂肪や腹水【ふくすい】がたまっている可能性があります。
このとき、腸の痛みとは別に、押さえた時の違和感もチェックしておくとよいです。
例えば、下図で示している左下腹部辺りに硬いものを触れる場合は、腸に便がたまっていると考えられます。
ここにはS状結腸があります。
便秘になると、S状結腸に便がたまるので、固い感触になります。
ちなみに大腸の部位別の名称は、下図のようになっています。
大腸は病気の多い臓器で、病気によって痛みも出やすいです。
④お腹の、どの部分が痛いのか確認します。
詳しくは後述しますが、お腹を7つのブロックに分けて一ヵ所ずつ押さえます。
その時の痛みの有無、ほかの場所と比べて押さえたときの、感触の違いを確認します。
⑤痛みは、間欠的【かんけつてき】なものか、持続的なものかで、原因を分けて考えます。
間欠的な痛みとは、一定の時間をおいて、痛くなったり治まったりを繰り返すものです。
持続的な痛みとは、痛みが継続しておこるものです。
痛みの出かたによって、原因となる病気が異なるので、確認しておきます。
お腹を7つの部位に分けて痛みをチェック
下図のように、お腹を7つの部位に分けます。
右季肋部の痛み
①の部位は右季肋部【みぎきろくぶ】と呼ばれます。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:十二指腸潰瘍
その他の内臓の病気:胆石・胆のう炎、尿路結石、帯状疱疹、ポルフィリア
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:大腸がん、過敏性腸症候群
その他の内臓の病気:急性・慢性胆のう炎、胆のうがん、肝膿腫、急性肝炎、肝臓がん、横隔膜下腫瘍
などが、原因として考えられます。
心窩部の痛み
②の部位は心窩部【しんかぶ】と呼ばれます。
一般的には「みぞおち」と呼ばれます。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:十二指腸潰瘍、虫垂炎初期、過敏性腸症候群
その他の内臓の病気:胃潰瘍、急性胃炎、胃痙攣、胆石発作
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:十二指腸潰瘍穿孔
その他の内臓の病気:胃潰瘍穿孔、急性膵炎、横隔膜下腫瘍、心筋梗塞、肺炎、胸膜炎
などが、原因として考えられます。
左季肋部の痛み
③の部位は、左季肋部【ひだりきろくぶ】と呼ばれます。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:過敏性腸症候群
その他の内臓の病気:尿路結石
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:大腸癌、過敏性腸症候群
その他の内臓の病気:脾梗塞、巨大脾腫、急性膵炎、膵癌、腎盂炎
などが、原因として考えられます。
右下腹部の痛み
④の部位は右下腹部【みぎかふくぶ】と呼ばれます。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:急性虫垂炎、クローン病、大腸憩室炎、腸重積、単純性腸潰瘍
その他の内臓の病気:尿路結石
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:急性虫垂炎、盲腸周囲腫瘍(憩室炎)、メッケル憩室炎、クローン病、腸結核、大腸癌、過敏性腸症候群、鼠径ヘルニア
その他の内臓の病気:卵管炎、卵巣嚢腫茎捻転、中間痛、子宮外妊娠、腎下垂、脊椎カリエス
などが、原因として考えられます。
臍部の痛み
⑤の部位は臍部【さいぶ】と呼ばれます。「へそ」周辺のことですね。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:クローン病、急性腸炎、腸閉塞
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:急性腸炎、クローン病、腸閉塞、腸内寄生虫
などが、原因として考えられます。
左下腹部の痛み
⑥の部位は左下腹部【ひだりかふくぶ】と呼ばれます。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:急性大腸炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、S状結腸軸捻転、大腸憩室炎
その他の内臓の病気:尿路結石
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:急性大腸炎、過敏性腸症候群、大腸癌、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎、大腸憩室炎、クローン病、鼠径ヘルニア
その他の内臓の病気:卵管炎、卵巣嚢腫茎捻転、中間痛、子宮外妊娠、腎下垂、脊椎カリエス
などが、原因として考えられます。
下腹部中央の痛み
⑦の部位は下腹部中央【かふくぶちゅうおう】と呼ばれます。
ここに間欠的な痛みがある場合、
腸の病気:腸炎
その他の内臓の病気:尿路結石、付属器炎、月経困難症
などが、原因として考えられます。
ここに持続的な痛みがある場合、
腸の病気:過敏性腸症候群
その他の内臓の病気:骨盤腹膜炎、尿閉、妊娠、子宮癌、付属器炎、急性膀胱炎
などが、原因として考えられます。
参考文献 朝倉均:「腹痛・腹部膨満」、「腸疾患診療のノウハウ」、「medicina」.vol.39、No.5、p756、医学書院、2002
腸が原因の痛みは、下腹部や、お腹の中央にでやすい
お腹の部位別に、痛みの原因となる病気についてお伝えしてきました。
ここまで、お伝えして生きた中で気づかれたかもしれませんが、腸の病気が原因の痛みは、下腹部やお腹の中央に現れやすいです。
これは、小腸、大腸の位置を見てみると、納得できます。
このように、小腸や大腸は、骨盤にスッポリと入り込むようにして存在しています。
病気が発生している臓器の周囲で、痛みが出ることが多いので、腸の痛みは下腹部やお腹の中央に現れやすいのです。
お腹、腸の痛みを病院で検査するとき
お腹や腸の痛みで病院を受診すると、痛みの部位とともに出ている症状を合わせて検査項目が選択されます。
これは医師の判断によって変わってくるものなので、一概に同じ検査がされるわけではありません。
腹痛とともに発熱、下血、便秘、腹部膨満感、下痢の有無などをみて、検査、問診、触診などを行います。
一般的な検査としては、血液検査、内視鏡検査、腹部レントゲン、CT、エコー検査などが行われることが多いです。
お腹や腸の痛みは原因がさまざまなので、場合によっては検査項目も多くなり原因の特定に時間がかかることもあります。
腸は、体の中で栄養を吸収できる唯一の器官です。
ですから、腸の病気は命に関わる重大な病気も多いです。
お腹に痛みを感じたときは、安易に自己判断することなく、病院を受診するようにしましょう。
まとめ
お腹や腸の痛みの原因について、お伝えしてきました。
痛みの出る部位によって、予測される原因は異なります。
そして、痛みは体からのSOSのサインであることを忘れてはなりません。
そのサインを、痛み止めなどを使って無視するのはよくないです。
専門医にかかって、きちんと検査を受け、原因を見つけましょう。
必要があれば治療を受け、体を大切にしましょう。
また、何が痛みの原因になっているか考えるときには、解剖学の知識は欠かせません。
内臓の解剖学についてはこちらの記事をご参照ください。
参照)内臓の位置を図で解説
痛みの原因を正しく判断するためには、専門医の診察が必要です。
本記事はあくまでも参考程度にしてください。