虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)は虚血性腸疾患(きょけつせいちょうしっかん)の1つです。
虚血性腸疾患とは簡単に言うと、腸に動脈の血液が行き渡らないことで起こる病気のことを言います。
虚血性腸疾患には、虚血性大腸炎の他に
- 急性腸間膜動脈閉塞症(きゅうせいちょうかんまくどうみゃくへいそくしょう)
- 腸間膜静脈血栓症
- 非閉塞性腸間膜虚血
- 腹部アンギナ
などが挙げられます。
虚血性大腸炎の特徴は、急に腹部の痛みが発生し(左下腹部に多い)、50歳以上の便秘がちな人に多いという特徴があります。
また腹部の痛みに続いて、下痢や下血が見られることもあります。
通常は1〜2週間ほどで改善することが多い病気ですが、重症化することもあり、何より痛みや下血など不安になる症状が出てくる特徴があります。
そこで今回は、虚血性大腸炎が起こる原因や予防法を、食事やストレスの観点からお伝えしていきます。
もくじ
虚血性大腸炎の原因とは?
虚血性大腸炎は、便秘や動脈硬化が原因と考えられています。
腸にたまった便によって物理的に圧迫を受けたり、動脈硬化で血流が悪くなるなどして、必要な血液量が供給されず発症してしまいます。
冒頭で虚血性大腸炎は、左下腹部に多いということをお伝えしました。
左下腹部にあるのは、大腸の中でS状結腸や下行結腸と呼ばれる部位です。
S状結腸と下行結腸の位置を図で確認しておきましょう。
この2つの部位で虚血性大腸炎の約65%〜90%が発生します。
S状結腸や下行結腸は排泄までの間、便が溜まる部位です。そのため便秘の人では過剰に便が溜まり、虚血性大腸炎の温床になってしまうのです。
普通、内臓はある場所が虚血状態に陥ると、そこに繋がる他の血管を利用して血流を確保します。
しかしこの部位は、動脈同士のバイパスが少なく、虚血状態に陥るとそれをカバーするのが、他の部位よりも難しいのです。
こういった解剖上の特徴もあって、S状結腸や下行結腸で虚血性大腸炎が起こりやすいのです。
虚血性大腸炎はストレスでも起こる?
腸と脳は深い関わりがあり、腸脳相関(ちょうのうそうかん)という言葉があるくらいです。
緊張したりストレスを感じるとお腹が痛くなるという人もいますが、これも腸脳相関によるものです。
過敏性腸症候群という病気があります。
これは、腹痛などの腹部不快感とともに下痢や便秘などの便通異常が起こる病気です。
この病気は排便するとその症状が治まるという特徴があり、原因の1つにストレスがあると言われています。
ストレス社会と言われる現代において、悩む人の多い病気となっています。
虚血大腸炎の原因の1つに便秘があるということを上記しましたが、ストレスで起こる過敏性症候群の症状には便秘が含まれることもあります。
つまり、ストレスが引き金となり便秘を引き起こし、便秘によって虚血性大腸炎になる可能性があるということです。
このことから分かるように、ストレスは間接的に虚血性大腸炎の原因となる可能性があります。
精神的にも肉体的にも、ストレスを溜めすぎないような生活を心がけたいものです。
虚血性大腸炎と食事 何を食べると良い?
ひとたび虚血性大腸炎になると、絶食、つまり何も口にしないようにしなければなりません。
これは治療の一環として行われるものです。
しかし、虚血性大腸炎になってしまう前の予防法があります。
それは食事に気をつけることです。
虚血性大腸炎の原因は動脈硬化と便秘です。
動脈硬化を防ぐには脂質の取りすぎないように注意することです。
脂身の多い肉を控えることも大切ですし、加工された脂であるマーガリンやショートニングなどのいわゆるトランス脂肪酸を避けることも大切です。
トランス脂肪酸の体への害についてはこちらの記事をご参照ください。
参照)ショートニング、マーガリン、トランス脂肪酸の害 脳がダメに!
便秘を改善するには、まずは必要な水分を摂取することです。
体に水分が足りない状態では、便に使える水分もおのずと足りなくなり、カチカチの便の便秘になってしまいます。
ヒトは1日に【体重✖️0.04】の値の水分量が必要です。
つまり、体重が50kgの人であれば、50✖️0.04=2ℓの水分が必要ということです。
ただし、普通量の食事を摂っていれば、食物に含まれている水分が約1ℓ程度はあります。
ですから、体重50kgの人で1日に1ℓ程度の水分を摂る必要があります。
この時に注意すべきことは、カフェインなどの利尿作用を含む飲み物は必要な水分量にカウントしないということです。
コーヒーなどのカフェインを含む飲み物は、尿として排泄されてしまうので、効率的に水分を摂ることができません。
お水やカフェインを含まないお茶から水分を摂取するようにしてください。
食べ物で気をつけるのは、食物繊維を摂って便が出やすくすることです。
ですが食物繊維は2種類あります。
1つは不溶性の食物繊維で、これは便のカサを増す特徴のある食物繊維です。
便秘の時にこの食物繊維を摂ると、便秘で詰まっているものが余計に詰まってしまいます。
もう1つは水溶性の食物繊維で、これは便を水々しくしてくれる食物繊維です。
便秘の時には、便はカチカチになっていますから、水溶性食物繊維は便秘緩和に有効と言えます。
水溶性食物繊維を多く含む食材は、ワカメなどの海藻類や、キウイなどの果物類です。
これらの食事を摂って便秘を緩和することで、虚血性大腸炎のリスクも減らすことができます。
特に若い方が虚血性大腸炎になる場合は、ほとんどが便秘に起因します。
ですから、若い人ほど便秘に気をつけておく必要があります。
虚血性大腸炎は再発することもある?
虚血性大腸炎に一度なったことがある方は、再発することがあるのかどうか心配だと思います。
腹痛や下血など辛い症状が出るので不安も大きいでしょう。
幸いなことに虚血性大腸炎の再発率は約10%と言われており、再発しにくい病気と言えます。
ですが、再発する人も中にはいます。
そこで大切なのは上記した通り、動脈硬化や便秘を改善するための食習慣を身につけることです。
動脈硬化の改善は一朝一夕にはできませんが、便秘に関しては水分量を調整するだけでも改善することもあります。
とにかく、今できることをコツコツやっていくことが大切です。
虚血性大腸炎 下血が出るときは要注意!
下血(げけつ)とは、便に混じって赤色や黒色になった血液が肛門から出てくる状態を指します。
下血が出ているということは、消化管からの出血が起こっているということ意味します。
すぐに止血する必要がありますので、下血がある時には、速やかに専門医を受診してください。
下血については、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
参照)下血の原因とは?ストレスとの関連や検査法について解説!
虚血性大腸炎の予防法とは
虚血性大腸炎の予防法についてまとめると、まずは動脈硬化と便秘を改善することが第一です。
そのために重要なことは、食生活の改善です。
日々の食事によって私たちの体は作られており、動脈硬化や便秘といった症状は、その結果です。
便秘症のある方や病院で動脈硬化を指摘されている方は、日々の食生活を見直してください。
今はそれほど気にしていなくても、将来的に虚血性大腸炎で腹痛や下血に苦しむ羽目になってしまうかもしれません。
そうなる前に対策をとっていきましょう。
まとめ
虚血性大腸炎を引き起こす原因や予防法について解説してきました。
動脈硬化や便秘が虚血性大腸炎の引き金になることがお分かりいただけたと思います。
そしてこれらの病気を予防するには、まずは日々の食事を見直すことが大切です。
人の体は、食べたものからしか作られません。
ですから、食事から自分の体を見直して、虚血性大腸炎で苦しむことがないようにしていきましょう。