脾臓(ひぞう)と聞いて、どこの場所にあるかすぐに答えられる人は、少ないのではないでしょうか。
普段意識されることの少ない脾臓ですが、左のわき腹で人知れず働いています。
脾臓の働きにより、免疫力が強化されたり、古くなった赤血球が除去されるなどしています。
今回は脾臓の位置を解剖図でお伝えし、脾臓が原因で起こる痛みや病気についても解説していきます。
脾臓の位置と働きを図を使って解説!
ではまずは脾臓の位置を解剖図で確認してみましょう。
こちらが脾臓です。
左の肋骨下にある、握りこぶし程度の大きさの臓器です。
脾臓はスポンジ状に柔らかく、中は白脾髄(はくひずい)と赤脾髄(せきひずい)という2つの組織からできています。
脾臓は肋骨下にあり、全体が見えにくいので、肋骨を外し拡大した画像も載せておきます。
その他の臓器との位置関係が分かるように、こちらの画像もご参照ください。
消化器系と脾臓の正面からの図です。むかって右端にある紫色の物が脾臓です。
後ろからみるとこのようになっています。
白脾髄は免疫系としての働きを担っており、リンパ球を作っています。
一方、赤脾髄にも免疫系の働きがあり、有害なウイルスや細菌を退治してくれます。
そして、赤脾髄にはもうひとつ大事な働きがあります。それは、古くなったり、損傷した赤血球を回収、破壊することです。
赤脾髄の働きにより、いわば血液のクリーニングが行われているのです。
さらに赤脾髄には血液成分を貯蔵する働きもあります。
急に走った時などに、左のわき腹が痛むのは、脾臓から各筋肉などに血液が流れていくため、とも言われています。
脾臓は重さが30g~100g以上にもなります。
3倍以上重さが変わるのは、血液が脾臓に蓄えられたり、放出されたりするためです。
体内の血液循環は心臓や腎臓が担っていますが、脾臓は自らの中に血液を溜めこんだり、放出したりすることで全身の血流量を調整する役割も持っているのです。
ちなみに脾臓を摘出しても人は生き続けることができます。
免疫作用や赤血球の回収など欠損した機能は肝臓が代わりに担うと言われています。
しかし、脾臓が欠損することで感染症にかかりやすくなるという研究が報告されており、脾臓の重要性が認識されています。
脾臓の痛みの原因になる病気とは?
脾腫(ひしゅ)
脾臓の病気で代表的なものが脾腫(ひしゅ)です。
脾臓が腫れることを脾腫といいます。
臓器が大きくなる時は、その機能を強く働かせようとしている場合もあります。
つまり必要性があって、腫れていることもあるということです。
例えば、結核にかかった時にも脾腫の起きる可能性があります。
これは免疫系の働きを持っている脾臓が、結核菌を退治するために、その機能を強くするために腫れていると考えることもできます。
このような脾腫を引き起こす病気は様々で、
- 肝炎や梅毒などの感染症
- 貧血
- 白血病
- 肝硬変
- 脾臓の嚢胞
- 全身性エリテマトーデス
などが代表的です。(このほかにも多くの病気が脾腫の原因になり得ます)
脾臓は普段は触診することが難しいですが、脾腫が起こると触れることができます。
そのため診断には触診を行います。その他に画像検査も行って診断することもあります。
脾臓損傷
脾臓損傷は交通事故などの強い衝撃によっておこることが多いです。
脾臓は血液を貯蔵する性質があるので、損傷が大きいと出血も多量になります。
血液が体外に出ず、腹腔内に溜まりだした場合は、その他の臓器を圧迫し機能不全を起こす危険性もあるため、手術が必要になることもあります。
また交通事故などで脾臓損傷を負うと、多くの場合その他の臓器も一緒に損傷を負っていることが多いので、その手当ても必要です。
脾臓損傷が起こった場合は、痛みを伴います。左のわき腹あたりや背中、左肩に痛みが出ることもあります。
脾腫や脾臓損傷に対して、一昔前までは、摘出術も多く行われていました。
しかし近年の研究で脾臓の免疫系の対する働きは大きく、脾臓を摘出するとその後、感染症にかかりやすいことが分かっています。
ですから最近は、なるべく摘出はせず、傷の縫合、止血処置をして回復を待つことが多いです。
膵臓と脾臓の位置について
脾臓と膵臓の位置関係を図で確認してみましょう。一緒に十二指腸と胆のうもあります。
膵臓の先端部分である、膵尾部(すいびぶ)は脾臓の脾門(ひもん)と呼ばれる部位にくっついています。
内臓の中でも隣接する臓器どうしは、連携して働いていることが多いです。
機能的には、脾臓は免疫系と古くなった赤血球の回収、膵臓は消化と血糖値の調節と、関わる機能はありません。
しかし内臓は感情面とのつながりを指摘されることも多いです。
例えば腹が立つ、断腸の思いなど腹部の臓器と感情を結びつけた言葉は多いです。
ですから、そのような感情的な変化を脾臓と膵臓で情報共有しているということも考えられます。
また、東洋医学的には脾と膵は同じ属性と考えられており、ここでの結び付きも無視できません。
内臓を見て、その位置を考えた時に、臓器はひとつひとつが意味があってその場所に配置されているということが分かります。
こちらの記事では、内臓全体の位置関係について解説していますので、ご参照ください。
まとめ
「脾臓の位置を図でチェック!痛みや病気についても解説」と題してお伝えしてきました。
普段はあまり意識することのない地味な臓器ですが、免疫作用があったり、古くなった赤血球の回収、血液の貯蔵など、その役割は様々です。
左のわき腹や背中の痛みがある方は、もしかしたら脾臓が原因になっているかもしれません。
重要な臓器である脾臓を、いま一度認識下さい。