「解剖学でヤコビー線という言葉が出てきたけど、どこのことなのか分からない」
「ヤコビー線に、どのような臨床的な意味があるのかわからない」
このページを見られている方は、上記のような疑問を持っているのではないでしょうか。
ヤコビー線とは、「左右の腸骨稜【ちょうこつりょう】を結んだ線のこと」です。
ヤコビー線は第4腰椎の棘突起の上を通過しており、第4腰椎の棘突起の位置を判別するのに役立ちます。
また、腰椎麻酔をするときにもヤコビー線を基準にして、針をさす位置が決められます。
以上が、ヤコビー線の位置や、ヤコビー線の臨床的な意味の解説です。
このように文字で書けばそれまでです。
しかし、文字で読むとイメージしづらいですし、記憶にも残りづらいのではないでしょうか。
そこで今回は、ヤコビー線の位置を解剖図を用いてわかりやすく解説していきます。
ヤコビー線の位置を図でチェック!
では、さっそくヤコビー線の位置を図で確認してみましょう。
まずは、ヤコビー線を見つけるときの基準となる、腸骨稜【ちょうこつりょう】の位置を図でお伝えします。
下図は骨盤の図ですが、赤線のところが腸骨稜です。
体全体でみると、このような位置になります。
この左右の腸骨稜を結んだ線が、ヤコビー線です。
解剖図で、ヤコビー線を確認してみましょう。
上図で赤線を引いているところが、ヤコビー線です。
ちょうど、第4腰椎の棘突起上を通過しています。
ここまでのご説明でお分かりになったと思いますが、
ヤコビー線を見つけるときには、まずは腸骨稜を見つけなければなりません。
そして、腸骨稜は、体表からでも確認することができます。
下図のように腰に手をやると、体表からも腸骨稜に触れることができます。
骨盤の形をイメージして、腸骨稜を探しましょう。
ヤコビー線の臨床的な意味
冒頭でもお伝えした通り、ヤコビー線によって、
- 第4腰椎の棘突起の位置を判別できる
- 腰椎麻酔をするときに、ヤコビー線を基準にして、針をさす位置が決められる
などの臨床的な意味があります。
このほかに、体幹の側屈の可動域を測るときにも、ヤコビー線が基準になります。
ヤコビー線の中心に立てた垂直線を基準とし、第1胸椎棘突起と第5腰椎の棘突起を結ぶ線がどのくらい動いたかによって、側屈の関節可動域がわかります。
ヤコビー線と腸の関係
ヤコビー線を見つけるときの、基準となる腸骨稜は、骨盤の一部です。
そんな骨盤には、腸をはじめとした内臓を支える役割があります。
内臓は、臓器を支持する組織によって、
ある程度その位置が決められています。
しかし、人が生活している以上、
常に重力にさらされており、下へ下へと引き下げる力が働いています。
そんな内臓を一番下で支えているのが、骨盤です。
骨盤に下支えされることによって、重力に負けずに内臓が本来の位置にとどまることができています。
ちなみに、その骨盤の中でも底面を支えているのは、骨盤底筋です。
骨盤底筋が骨盤の底面に張っており、内臓を支えるとともに尿や便の排泄のときにもその役割を果たしています。
ところが、この骨盤底筋は加齢に伴って機能が低下することがあります。
特に出産を経験をしている女性に顕著に現れます。
骨盤底筋の機能低下を抑えるには、骨盤底筋体操を行うと良いです。
このような体操を行っておくことで、骨盤底筋の機能低下を予防することができます。
また、骨盤は体外の衝撃から内臓を守る働きもあります。
内臓は、骨のように固くありません。
ですから、例えば事故などによって強い衝撃が加わると、損傷してしまうことがあります。
そのような事態を避けるために、骨盤は内臓を守るような形状をしています。
あらためて骨盤の形状を見てみると、
筒状の形をしているのがお分かりになると思います。
この形は、骨盤の内側に内臓を収めるために作られています。
骨盤の内側には、腸を始めとした内臓があります。
特に腸は、栄養を吸収できる唯一の器官です。
すべての臓器は栄養の吸収なくして働くことはできません。
こういったことを考えると、腸は人体の臓器の中でも最も大切な臓器のひとつと言えるでしょう。
そんな大切な腸を守るように、骨盤はこのような形状になっているのです。
まとめ
ヤコビー線の位置を図でお伝えし、その見つけ方も解説してきました。
左右の腸骨稜を結んだ線が、そのままヤコビー線になるのでしたね。
また、ヤコビー線の臨床的な意味や、骨盤との関係がお分かりになられたと思います。
そして、ヤコビー線を見つける基準となる骨盤は、腸などの内臓を支えたり、守る働きがあります。
人体はひとつ、ひとつの内臓や骨格に意味があって、その形、位置にあります。
解剖学を勉強していくと、いかに人の体がうまく作られているかということがわかります。
解剖学の勉強をしていくと新しい発見があるでしょう。
解剖学を勉強してみたい方には、こちらの解剖学書がおすすめです。